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15



「え…?」
フレンは聞こえなかったとばかりにアグエロンに聞き返した。
しまった聞こえない振りをすればよかったと思ったが後の祭りだった。
「いや、俺らの同期にさ、フレンってのがいるんだけどそいつに似てんなぁ~と思って。
 言うこととか…よくみたら顔もどことなく…」
「!」
まじまじと観察するように見られてフレンはユーリの後ろに隠れた。
「…あんま見んなよ」
「なんだよいいだろ?減るもんじゃあるまいし…」
ユーリがフレンを隠すようにアグエロンとの間に出た。
「減るとかそんなんじゃなく…見せたくねぇ」
それはフレンがレンだとばれると危惧しているのとは違い、
ただフレンを見てほしくないとそういう独占欲のようなものが含まれている気がした。
「なんだよ見せんのも嫌なのかよ」
「………。」
ユーリは無言でフレンを後ろにやるように隠した。
はぁ、と溜め息をついてアグエロンは「わかったよ」と諦めた。
「レン悪かった。あんまりにも似てたからさ。」
「…い、いえ…」
つい女装中なのを忘れてユーリに接してしまった自分の失態にフレンは反省した。
「でも怪しいとは思ってたけどやっぱりお前フレンみたいなのがタイプだったんだな」
「……は?」
ユーリは素っ頓狂な声を上げた。
「前々からやたらベタベタしてると思ってたが…へぇ~」
「…なんだよそのベタベタって…」
ユーリが心外だとばかりに睨む。
「あれ、お前自覚ねぇの?喧嘩してんのとか周りに「痴話喧嘩」とか言われてんの」
「ちっ痴話喧嘩!?」
言ったのはフレンだった。
「あ、心配すんなよ、フレンって男だから。」
アグエロンが平気な顔で繕ってきたがそういうことじゃない。
「しかも新婚カップルじゃなくて熟年カップルっての?なのにラブラブ。」
「じ…熟年でラブラブ…」
そんなこと言われていたなんて初耳だ…
これはユーリとの接し方も少し考え直さないと…
とフレンは心の中で思っていたのだがユーリはそれと反対に嬉しそうに笑った。
「…熟年カップル…ラブラブ…痴話喧嘩……」
ユーリは後ろに隠れるフレンに振り返ってにやりと口の端を吊り上げた。
「だってよ」
「…嬉しそうに言わないでくれ…君だって同じように周りから思われてるんだぞ」
小声で返す。
「やっぱさ、レンがフレンと似てるから付き合ったのか?それともその逆か?」
アグエロンがユーリに耳打ちするように言ったがそれはバッチリフレンの耳にも届いていた。
「………。」
ユーリが自分を惚れさせると言ったのは自分の顔が好みだったと言うことだろうか。
今は女だから恋愛対象と勘違いしているだけなのか…

女…だから…

フレンは胸がきりきりと痛むのを感じていた。
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14


「待たせた、悪ぃ」
何気なくアグエロンとシーアの元に帰ってきた二人。
この二人をどうするかという話し合いをしにいったはずなのに
そのことを忘れていることすら忘れていた。
二人は今勝負の最中なのだ。
ユーリは早速フレンの手をとった。
「……」
「微妙な顔すんなっよし、行くぞ」
次の行き先なんてきまっていないのに勝手に歩き出す。
「え、あ、ちょっと待てよっどこ行くつもりだよ」
呆気にとられていた二人は漸く気が付いて慌てて後を追う。
「いや、きまってないけど。止まってるよりは動いた方がいいだろ」
「…そうね…あ、じゃあ露店通りに行かない?」
露店通りとは市民街にある文字通り露店が連なる通りだ。
「んじゃそれで。」
シーアの提案に即答で頷いてフレンの手を引いた。
「…気のせいか…さっきまでより更にラブラブになってる気が…」
「………。」
ユーリとフレンの様子を見てアグエロンが呟く。
シーアは黙っていた。

「フレン、何か食うか?」
「さっき食べたばっかりじゃないか」
たくさんの飲食の露店が並んでいてそれを見ながらユーリがフレンに聞く。
アグエロンとシーアを完全に忘れているユーリはフレンの手を引いて
2人だけのデートを楽しんでいた。
突然さっきまでよりもラブラブ度が上がった二人を前にアグエロンとシーアも会話に入り込めず
少し現実が見えたアグエロンはシーアとの関係を元に戻すべく頑張って話しかけていて
幸運にも正体を隠してダブルデートをしているということを綺麗に忘れ去って
レンのことをフレンと呼ぶユーリが気付かれることはなかった。
「あ!クレープ屋発見!」
「わっちょっとっ!」
クレープ屋を発見したユーリに引っ張られてフレンはバランスを崩しながらも持ちこたえる。
クレープしか見えていないユーリには
突然人ごみに消えた二人を捜すアグエロンの声さえ届いていない。
甘味が関わるとこれだから…と文句を言っている間にユーリはクレープをお買い上げしてしまった。
「…あ…」
「何?」
ユーリがしまったという声を出したのでフレンは首を傾げた。
「…わり、フレン金貸して…」
「…君ね…」
本当に惚れさせる気があるんだろうか…
フレンは溜め息をついてお金を貸した。
ユーリは一つクレープを買った。
待ちきれないとばかりにまずユーリが一口かじる。
「ん、うまい!」
いいながら差し出されるクレープ。
フレンもそれを一口かじる。
「ホントだね、でもお腹いっぱいだよ…」
「甘いもんは別腹って言うだろ?」
「それ女子が言う台詞だよ…」
呆れながら返すとまた一口ユーリがクレープをかじってフレンに差し出す。
「美味しい?」
「ん。」
「いいよ、ユーリ全部食べなよ」
「えっいいのか?」
「どうぞ」と差し出す。
「悪ぃな、金は後で返すから」
「そういって今まで返ってきたことないからいいよ別に」
「返したろ、この間」
「返ってきたそのお金をそのまま君に貸したじゃないか、
 大体君はお金に対する認識が甘いんだよ、
 いつもその日暮らしみたいな生活してるから足りなくなるんじゃないか」
「あぁもううるせぇな」
「うるさいってなんだよ、君が言われるようなことするから…」
文句を言いながら漸く追いついてきたアグエロンは
そんな自分にも気付かず口論する2人の会話の様子を見て口を挟んだ。
「…なんかレンってフレンに似てないか?」
「!!?」
びくんとフレンが反応した。
13


気落ちしているように見えるユーリにはさして触れないでフレンは話を進めた。
「とりあえずさ、シーアの気持ちが君に向いてるのが問題なんだよね。
 シーアがアグエロンを見るならアグエロンだってシーアを見てくれると思うんだ。」
「俺さっき迷惑だってはっきり言っといたけど…」
「あんまり効果なかったみたいだけどね」
「じゃあどうすりゃいいんだよ」
「う~ん……」
腕を組んで考える。
「君の格好悪い姿を見せ付ける」
「俺らがすっげーいちゃついてる姿を見せる」
二人はほぼ同時に口を開いた。
「なっなんだよそれっそんなことしなくても幻滅させれば済むことだろ!?」
「いや、俺カッコイイから何やっても様になるっていうか?
 それなら俺らがいちゃついて入り込む余地無しって思わせる方が楽だし確実だ」
「カッコイイとか自分で言うなっ」
「カッコイイだろ?」
顔を覗き込むように見詰められた。
「だから僕に聞くなってば!さっきから変だよ、僕の正体知ってる君がなんで…」
「知ってるから…って言ったら…?」
「…知ってる…から…?」
きょとんと目を丸くしてユーリを見る。
「…なんか…お前が俺以外を見てるのが…すげえ嫌だ…」
「……なにそれ…嫉妬みたい…」
「……わかんねぇ…でも嫌だ…」
「……」
あの時は本当に一騎士としてあの場面を見ていたからそういう風には思わなかったけれど…
今から考えてみればあの後ろ姿は女の人の目線ではかっこよかったのかも…。
「大丈夫、ユーリかっこよかったよ」
「…アグエロンより?」
「ん?それは比べられないよ、それは立ち位置的な問題じゃないか。
 まぁ君に一歩後ろに下がって大人しくしてろってのは無理かもしれないけど」
「なんだよそれ…」
「本当のこと。」
きっぱり言い切られてむっと口を歪める。
「っよし!わかった!」
「なに?」
「そうまで言うなら俺のカッコイイところを見せてお前を惚れさせてやる!」
「……。」
僕に惚れられて嬉しいのだろうか…
心底疑問に思ったが口には出さなかった。
むしろ望むところだと勝負を受けるような気持ちになってしまった。
「へぇ…惚れさせてくれるの?それは楽しみだな」
「言ったな…言いやがったな…絶対惚れさせてやる…っ」
二人の間にわけのわからない自信が渦巻く。




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というわけで~
明日から留守にしますね~~
絵日記は予約更新でいつもどおり更新しますので大丈夫なはずですよ!!!
では!!
12

「あ、あのさ、レン」
「ん、何?」
「近寄んな!」
「……」
完全に男女の心の矢印がバラバラな方へいってしまった。
もともと付き合い始めな上にデートらしいデートも始めてのアグエロンとシーアは
お互い付き合っていることも忘れているようだ。
アグエロンはレンを気にしてシーアはユーリのことをじっと見る。

「あぁもう!アグエロン!ふ……じゃねぇ…レンにちょっかい出すなら俺ら帰るぞ!?」
「え、そんな…」
「でもレンもアグエロンのこと気にしてるんだよね?」
「え…いやそんなことは…」
「ねぇよな!?」
ユーリがフレンの言葉の続きを否定を許さない疑問形で付け足した。
「あ、うん…」
「俺のことが好きなんだろお前!」
こくりと肯定に頷いた。
「ほら見ろ!レンは俺のことが好きなんだよ!さっさと諦めろ!
 っつーか違うだろ、お前らのデートに付き合ってやってんだろ!話ややこしくすんな」
フレンの肩を抱きながら二人を睨むユーリ。
「え、でも…シーアはお前のこと…意識しちゃってるみたいだし…」
「えっや、やだ何言ってんのよっ」
「そうだよ、シーアはアグエロンと付き合ってるんだからそんなことあるわけないじゃない」
「そ、そうよっ」
と、言いつつも視線はやはりユーリを伺っている。
その視線に気付いていたユーリは釘を刺すように言った。
「……それに俺はレンのことが好きだから、んなこと言われても困るしな」
「そ、そうだよね…」
フレンは微妙な気持ちになったがこれで状況が改善されるなら…と口を噤んだ。
しかし一度こんがらがった気持ちの糸はそう簡単に解けるものではなく…。
デートをしているはずの二人の視線がお互いレンとユーリの方にいっているのを
ユーリが確認して「ちょっと待っててくれ」と二人を残してレンを連れてその場を離れた。

「なんか変なことになったな…」
「ユーリがアグエロンに見せ場を作らないから悪いんじゃないか」
「それを言うならお前が「アグエロンカッコイイ」ってそればっか言うからだろ!?」
「あれはシーアがユーリしか見てなかったから
 アグエロンもかっこよかったよって教えておこうかと思って…っ」
「…実際どっちだ…?」
「は?何が?」
「俺とアグエロン、どっちがかっこよかった?」
「……君は僕にそれを聞いてどうしようって言うんだ…?」
「……どっちだ?」
「………。両方普通だった。」
「………。」
心なしか心なしかユーリがガクリと肩を落としたように見えたけど気のせいだろうか。






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実はクリスマスと正月辺り家に居ないことになってまして。
この間の日曜に6時間くらいかけて一週間分くらいの絵日記ストックを作っております(笑)
それによりますとこの連載が29日に終わる…のかな?
で、次の連載なんですが壬のストックどおりにいけば完全シリアスのアレフレっぽいユリフレが
待ち構えておりまして…。
正月からこのシリアスどうなのってことで正月は正月で急いで違う短編を御用意しました。
そんなわけで可能な限り年中無休で絵日記連載は更新していきたいと思います!!

ただ家にいないのでその辺もし拍手にてコメントなど送って下さった場合でも
即レス等はできませんので御了承くださいませ~。



今日は久しぶりにGやりました。
漸く最終ダンジョンですよ!!!
イヴィルでやってるんですが敵…そんなに強くない…?
まぁ油断すると全滅しかけるんですが^^;
11


「ありがとな、レン…」
ぎゅっと手を両手で握られた。
「え、そんな…御礼言われるようなことは何も…」
フレンは困惑する。
「いや、見ててくれただけでも嬉しいよ…!」
「あ、そっか…うん…」
職業上そういうところに目がいっただけなんだけど…
とは言えずに本気で嬉しそうなアグエロンになんとか笑みを返す。
彼女にやんわりフラレ気味な傷心のアグエロンはレンの存在に少し涙目だ。
「…随分仲良さそうだな…」
見つめ合う二人にぬっと黒い影が近付いた。
不機嫌な空気を纏わせたユーリにフレンは首を傾げる。
「レンってばアグエロンかっこよかったねってそればっかりなのよ?」
ふふっと笑いながらシーアがユーリに言った。
「や…それは…」
シーアに対して言ってたんだけど…
とフレンが心の中で呟いて微妙な顔をしていると「レン!」と思いっきり抱きしめられた。
「わっ!?」
抱きしめてきたのはアグエロン。
ユーリは片眉をぴくりと上げて反応する。
「悪かった!そんな熱い視線に気付かなくて…!」
「え、え?なに?」
「あ、やっぱりレンってアグエロンのこと意識してるんだっだからアグエロン見てたのね!」
「は!?」
そんな馬鹿な、何この展開…!とフレンの頭は混乱する。
「気持ちは有り難く受け取る!レンみたいな美人に想われてたなんて幸せ者だなぁ俺…!」
ぎゅーっと抱きしめられてフレンは
(っていうか抱きしめられたりしたら体型男だってばれないか!?)
と違うところに焦りを抱き始めていた。

「どうでもいいけどそれ以上触んな」
ぐいっとアグエロンの腕を掴んだのはユーリだ。
相変わらずの不機嫌な空気は更に黒さを増しているようにみえる。
「ふっふっふっ…悪かったなユーリ…レンはお前より俺を見ていたそうだ…」
「………」
「え、いや…」
「まさかの展開ねっレンがアグエロン意識するなんてっ……
 も、もしかしたらパートナーが入れ替わる…なんてことも…あるかもね…?」
頬を染めながらシーアがユーリに言う。
「っ絶対ない!!」
ユーリはフレンの手をぐっと掴み立ち上がらせる。
「お前俺以外の奴に惚れたりしたら許さねぇからなっ!」
「え、あ、はい…」
別にアグエロンをそういう風に見ていたわけではないんだけど…
と、思いながらもとりあえず頷く。
っていうかユーリは僕が男だって知ってるはずだろ?何で本気で怒ってるんだ…
これじゃ浮気をした彼女に怒る彼氏ではないか。
……あ、そうか、そういう役か…ユーリって意外と演技上手だなぁ…
と、フレンは的外れなことを考えていた。
10


やって来た騎士たちに貴族を差し出す。
ユーリは床にばらまかれた金を拾い集め店主に「ほら」と差し出した。
「あ、ありがとうございます…っ」
それを受け取って店主はペコペコと頭を下げる。
「うまかったぜ、俺らの支払いは…」
服のポケットを探って「あ」と声をもらす。
「…あ、あいつが払うから」
指を指されたアグエロンは
「金くらい持って来い」と怒鳴っていた。

荒らされた店内の片付けを手伝っていたフレンにシーアが食器の破片を集めながら近寄ってきた。
「ね、ユーリかっこよかったね」
「え?あ、そうだね」
楽しそうに話してくるシーアにフレンは頷いた。
「あれぞ騎士って感じでさ、ちょっときゅんときちゃった」
「……あ、でもアグエロンもかっこよかったでしょ?」
「え?」
「…え?」
居たっけ?的に首を傾げたシーアにフレンは顔を引き攣らせた。
どうやらシーアはユーリばかり見ていてアグエロンが目に入っていなかったらしい。
「アグエロン、ほ、ほら、他のお客さんが怪我しないように守ってくれてたじゃないっ」
「あ、そうなんだ…」
「そうなんだ…」
シーアは言いながらもユーリを見ていた。
こんなことでシーアがユーリに惚れるようなことがあったら…
アグエロンに申し訳ない…っ
フレンは頑張ってシーアにアグエロンを意識させるように頑張る。
「ほ、ほら、ここはいいからアグエロンのとこ行ってあげたら?」
「うん…」
ダメだあんまり聞いてない…
フレンがどうしようかと思っているとそこへアグエロンがやって来た。
「二人とも!怪我はないか!?」
「アグエロン!ぼ…私たちは大丈夫!アグエロンが守ってくれてたから!ね、シーア!」
「…うん」
シーアの目は御礼を言われて少し困ったようなユーリから離れない。
「…シーア…?」
アグエロンがそれに気付いて顔を引き攣らせる。
「か、かっこよかったよね、アグエロン!」
ね、シーア!と同意を求めたら
「そうね…ユーリかっこよかったね…」
と決定的な言葉が本人を目の前にして返ってきてしまった。
「シーア!?」
アグエロンは涙目でその事実を受け止める。
落ち込んでしまったアグエロンにフレンは慌てる。
「あ、アグエロンもかっこよかったよ!
 こういう時目立たなくても自分の役割をちゃんと全うするのってカッコイイと思う!」
「…え、そうかな…」
こくこくとフレンは頷く。
「レンはそういうのちゃんと見てくれてんだな…」
「そうそう、見てる人は見てるよ!アグエロンかっこよかった!」
少し頬を赤らめて嬉しそうに言うアグエロンの胸中にフレンは全く気付いていなかった。
9



料理も美味しく頂いて一段落した。
「美味しかったね。」
「あぁ、なかなかだったな」
それぞれ感想を言い合っていたその時だった。
ガチャーン!と食器の割れる音。
貴族様と下町の住人が混濁するこの場所で何もなかったことに
安心して席を立とうとしたときの出来事でシーア以外の3人は同時に溜め息をついた。
「こんなまずい飯があるか!私を家畜か何かと思っているのかね!?」
「美味しいと評判だから来てやったというのに!この肉の生産者は誰だ!?
 ちゃんと血統書のある牛の肉なんだろうな!?」
「え、そんな…とりあえず落ち着いて話をしましょう…他のお客様もいらっしゃいますから…」
困り果てる店主。
「話すことなぞないわ!こんな飯に金も払いたくない!」
「えぇ!?」
店主がそれは困りますと貴族に縋り付く。
それを振り払うように蹴飛ばすのを見てフレンがガタンと席を立ったがユーリに席へと引き戻された。
「!…ユーリ!」
「お前は今女。」
ぼそりと耳元で呟かれる。
「あ…でも…っ」
「わかってる。後は俺に任せろ」
ぽんとフレンの頭を撫でてやる。
「俺「たち」だ!」
アグエロンも立ち上がる。


「お金は払っていただかないとっ」
「ならもっと払い甲斐あるものをだせばよかろう!」
「きっちり全部食っといて金払いませんはねぇんじゃねぇの…?」
貴族が店主を殴ろうとしたその手をすんでのところで掴んで制止する。
「なっ触るな汚らわしい…っ」
腕を振りほどかれるのを黙って受け入れて手を離した。
「なんだ貴様は!生意気な目をしおって!」
「…何って…騎士だけど」
「は!?騎士だと!?…騎士…?お前が?」
「ちなみに俺もだ!」
アグエロンが後ろで叫ぶ。
「非番だけどな」
「……くっ」
「喧嘩したいなら受けてたつぜ?殴られて出頭して弁償すんのと
 素直に弁償して出頭すんのと…好きな方選びな」
ぐいっと胸倉に手をかけながら言う。
「ひっ!く、くそっ」
貴族はその眼光に負けて手を払い退けながら立ち上がって身なりを整えた。
「ふんっこんな店二度と来ぬわ!」
バシッと金を床にたたき付けた。
そのまま立ち去ろうとした貴族に「どこ行くんだよ」と首根っこを掴んで止める。
丁度騒ぎを聞き付けて来た騎士が来たのでユーリは「ナイスタイミング」と指を鳴らした。
8


ワイワイがやかやと賑わう店内。
お勧めのレストランだけあって繁盛している。
案内された場所に座りメニューを開く。
回りを見ると昼間だと言うのに酒を飲んだくれる人達が目に入った。
その中にはわざわざ貴族街からやってきたのか身なりの綺麗な貴族様の姿もあった。
そんなことには構わずメニューに視線を戻そうとするとアグエロンが言った。
「悪いな、普段貴族なんていないんだけど…もしあれなら場所変えるけど…」
「構わないよ、それだけ味が良いってことなんでしょ?」
にこりとフレンが微笑んで言うとアグエロンは少し意外だと言いたそうな顔をした。
「レンって意外とこういうの平気なんだな」
「私ちょっと怖いな…」
「え…?」
目を丸く見開くアグエロンと周りを伺って落ち着かない雰囲気を出すシーアを見て
フレンはしまったと内心思った。
ここは女の子は普通怖がる場面だ…
フレンは漸くそのことに気付いて「えっと、えっと」と言葉を探した。
そして隣に座るユーリの手をぎゅっと握った。
「ゆ、ユーリがいるから…平気!」
「へ?」
言われたユーリは間抜けな声を出して握られた手を見る。
「ね、助けてくれるよね…?」
瞳を潤ませながら言われてユーリは顔面が赤くなっていくのを感じる。
「あ、あぁっ任せろ!」
「シーアもアグエロンが居るから平気でしょ?」
と話をふるとシーアは暫く考えたようだが「そうだね…」と返してくれた。
「さ、さぁ!早く料理選ぼ!お腹空いちゃった!ね」
顔を隠すようにフレンがメニューを覗き始めたので全員それに従ってメニューに目を移した。


「あ、ユーリ、マーボーカレーがあるよ」
「ん、じゃあそれにすっかな…お前はハンバーグか?」
「うん!」
お互いのメニューを言い合って微笑み合う。
そんな二人を見てアグエロンがぽつりと呟く。
「なんかラブラブだな、おたくら…」
「え?」
「そうか?」
別にこれは演技じゃなかったんだけどな…とフレンは首を傾げる。
「ユーリ、お前普段彼女がいる素振りなんて全然見せないくせに!」
「………」
実際居ないからしょうがない。
二人は思った。
「公私混同しないタイプなんだよ」
ユーリが尤もらしいことを言う。
「ぷ」と吹き出してしまったフレンに「なんだよ」とユーリが頭をこついてきたが
それすら「いちゃつくな」と怒られてしまった。




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ちょっと急いで描いたらフレンがとても女の子になってしまった…。
女装してるからいいのだけれど…。
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