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自分は鈍感ではないと思う。
というかこんな瞳を向けられて気付かない奴はよっぽど鈍感。
この女は自分に惚れている。
それは確信に近いものだった。
ユーリは飲み物を買いに彼女の傍を離れた。
そして遠くから彼女を眺める。
やはり似ている。
顔はもちろんだが空気が、彼にすごく。
むしろ違うのは性別くらいだ。
普通ならそこが一番の違いなのだが。
「はい、コーヒーおまたせ」
とおばちゃんが二つのコップを手渡してくれた。
「サンキュ」と受け取る。
自分の体を不思議そうに眺めたりしている女にぼーっと見惚れて
ユーリの意識は少しどこかに行っていた。
「あっ違うよっユーリ」
「へ?」
おばちゃんに言われて振り返った。
「それレモン!ミルクこっちだよ」
セルフサービスの棚からミルクを取り出して見せる。
「あ…」
ユーリはコーヒーにレモンを入れてしまっていた。
「まったく、ほらもう一杯出してあげるから」
「いや、いいよ、俺が間違っただけだしミルク入れ直せばなんとか飲めんだろ」
大体ユーリの砂糖の量は半端じゃない。
味はごまかせるだろう。…変な味になるのは間違いなさそうだが。
そう言いながらふと悪戯を思い付いたユーリはそのコップを持って女のところに戻った。
「お待たせ」
と女にコーヒーを差し出す。
「ありがとう」
と女は受け取る。
女が受け取ったのはレモン入りのコーヒー。
女が一口飲む。
「なにこれ変な味がする!」と言ってきたらネタばらし、
自分が持っている普通のコーヒーと取り替えてやる、
というまるでカップルのいちゃいちゃした可愛い悪戯のつもりだったのだが。
「おいしいね」
と予想外の言葉をかけられてユーリは「は?」と間抜けな声を出してしまった。
「おいしい?」
「うん、おいしい」
「…ちょ、一口くれ」
「え?ユーリも持ってるのに…」
とか言ってる女のコーヒーを一口飲むと、
コーヒーの苦みの中に確かにレモンの酸味が入り混じり飲めなくはないが間違ってもうまくはない。
「……」
コーヒーを返すと女はごく普通にコーヒーを飲んでいる。
「…普段コーヒー飲まない人?」
「え?毎朝コーヒーだけど…」
「…へぇ…」
味覚レベルが誰かさんと同じだ。
そう、この女と瓜二つである誰かさんと。
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