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16


ユーリに体を預けて、ヒックヒックと泣きつづけるフレンの背を優しく撫で続けた。
「…ごめんな、フレン、ちゃんと言おうって、ずっと思ってたんだけど…
 フラれたらって思ったら…何も言えなかった…」
ユーリは抱く腕の力を強くした。
まるで逃がさないようにしている様だった。
何度も死にたいと思っていたと言ったフレンを、どこにも逃がさないように…。
フレンは腕の中で身じろいで腕の力を緩めさせた。
顔をユーリの肩から離すと、その表情が曝されて、ユーリは心が熱くなるのを感じる。
そっと、涙で濡れる頬を拭ってやる。
フレンは辺りをキョロキョロと何かを探す。
それがノートであることをユーリは瞬時に理解して
ユーリの体の後ろで転がっていたそれをフレンに渡してやる。
フレンはノートに文字を書く。
『ユーリがそんなこと思ってたなんて、意外』
「…悪かったな…これでも…本気なんだよ…」
ユーリは口をへの字に曲げる。
『僕も、本気だったから、泡にならなくてよかった』
「…人魚姫…な…あれてっきりハッピーエンドなのかと思ってたのによ、
 お前に話聞いて更に言えなくなったっつの…」
フレンは目を細めて優しく笑った。
『僕が人魚姫ならユーリは王子様だね』
「…俺が王子様って柄かよ…それに王子様とはうまくいかなかったんだろ?
 きっと俺が王子じゃねぇからうまくいったんだな、お前ラッキーな人魚姫だな」
フレンは楽しそうに笑う。

あぁ可愛いなぁ、
このお姫様は俺のもんなのか…
俺は世界一幸せだ…

ユーリは真剣にそんなことを考えながらポケットの中を探る。
「フレン」
笑っているフレンを呼んで瞳を合わせる。
「フレン、これからも俺と一緒に居たいって…思ってくれるか?」
「…!………」
フレンは目を丸くしてユーリを見る。
そして一回、頷いた。
「そか、じゃあこれやる……もう勝手に下駄箱なんかに入れんじゃねぇぞ」
ユーリの手の平にはあの約束の指輪。
フレンは嬉しそうに頷いてそれを見詰める。
「…えと…フレン、嵌めていい?」
「……」
フレンはこくりと頷いて手を差し出す。
「…こっちじゃねぇ。左手」
寄越せとユーリが手を差し出した。
「………、」
瞬時に理解して戸惑うフレンの手を強引に掴んだ。
「…同じ奴に2回もプロポーズする羽目になるとは思わなかった…」
ユーリはそれを、左手の、薬指に通す。
子供の頃、大きくて親指でもスカスカだった指輪は薬指にぴったり嵌まった。
「いつか、ちゃんとしたの買ってやるからな、お姫様」
「……っ」
フレンは慌ててノートに文字を書く。
『僕も買うよ!』
「はは、んじゃ楽しみにしてるわ」

二人は誓いのキスをする。


二人の距離は近付いた。

そして、永遠に離れない心を手に入れた。



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最近ユーリを縛ったり触手でどうにかしたいという願望が強いのですがどうすれば…
モブユリが見たい。もしくはおっさん→一方的→ユーリが見たい。
究極受けのフレンちゃんに対しては攻めだからフレンちゃんの前では押せ押せでいってほしい彼も
やはりフェロモン兄なんでどうにかしておかしたい。(黙ってくれ)

□てんさん
■レス不要ということなので一言二言~~
 べろちゅーですら語彙が貧困な壬ですwww
 壬はすれ違い大好きだからてんさんの続きをやはり心の底から楽しみにしている!!!
 風邪も早目に治してね。
 というわけで終わったーー
 明日からはコメディになるよ。
 ではでは!ありがとうございました!!
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15


ユーリの気持ちがわからなくて不安になる。
そんな視線を受けてユーリは余計にしどろもどろになった。
「…えっと…だから……」
フレンは俯く。
自分を傷付かせない言葉を一生懸命探してくれているユーリに涙が出そうだった。
「違うんだ、その…確かに責任は感じてる…でもそれは…言い訳っていうか…こじつけっていうか…」
「………」
「お前から離れなくてもいい言葉を、咄嗟に探して出たってだけで…
 違うんだ、ホントはそんなんじゃなくて…」
「………」
フレンは首を傾げる。
ユーリはその純粋な瞳に一瞬怯んで、
だけど相応しい言葉も浮かばなくて、

感情に任せるままフレンの唇を奪った。

「……、」
何が起こっているかわかっていないフレンの唇に舌を差し込む。
上顎の敏感な部分を舌が這うと漸くピクンと反応したフレンが
ユーリの肩を押し返すがその力はあまりに弱くて、
なすがままにされたフレンは口腔を激しく犯されカクンと腰砕けになってしまってその場に座り込んだ。
「…、…、」
息苦しそうに乱れるフレンの両頬を包み込んで目を合わせた。
荒々しい口づけは、彼の気持ちを如実に表していた。
「…お前は俺の理想そのものなんだ…」
「……」
まだ息を少し乱したままユーリを見詰めるフレン。
「姿形、性格も、取り巻く空気や体温、何もかも全て…
 全部俺の理想が具現化したんじゃないかって思うくらい…」
「………」
「もしかしたら神様が俺にくれたものなんじゃないかって、そんなバカみたいなこと思うくらい…」
「……」
神様、なんてユーリが言うなんて、とまだ酸素が足りない頭でフレンはぼんやり考える。
「誰にも渡したくなかった…俺がお前のこと構ったら…お前は俺以外みないって思った…
 責任って言葉を使ったら…きっとお前は俺に遠慮して離れないと思った。
 俺に依存して欲しかった…」
「………、」
あまりにもな欲の塊をぶつけらられてフレンは困惑するのと同時に頬を赤らめる。
「…最低だろ、お前のこと考えてるフリして自分の欲をお前にぶつけてた」
ユーリが自嘲する。
「最低だ…けど離したくなかった…離れたくない…っ俺を軽蔑するか?
 離れたいなら言え。…はっきりいわねぇと…俺からは離してやることが出来ない…」
「…………」
フレンは目から涙を流し続けた。
生きててくれて、ありがとうと言って貰えているようで…
それを誰よりも大好きな人に言って貰えて…。
「…好きなんだ…フレン……」
「………」
額をコツンと引っ付けて、至近距離で瞳を覗き込んで返事を待つユーリに
フレンは眉尻を下げて微笑んだ。


僕も……君が好き…

音もなく紡がれたその言葉の唇を読んでユーリも安心したように笑った。
14


時は流れ、
フレンは漸くユーリに全ての思いを話す。
学校の屋上、見つめ合う二人以外に人はいない。


『ユーリは責任取りたいから僕の傍に居るって言った。だけど僕はそれが苦しくて…』
「…やっぱ…俺が居ると事故のこと思い出したりするか…?」
ユーリの言葉にフレンは首を振って否定した。
『そうじゃない。ただ』
「………」
書くのを躊躇ったフレンにユーリは更に顔を近付けた。
もともと近い場所に立っていただけにその距離は息もかかる近さになった。
「なに?ちゃんと書いて?」
落ち着かせるような、優しい声色。
「………」
フレンは続きを書く。
『ただ、ユーリは仕方なく僕と居るだけで本当は嫌なはずなのに』
「嫌?嫌なんか言ったか?俺」
『だって嫌に決まってる、
 僕は声も出せなくて面倒臭いし周りの人達の反応だってわからないほど鈍感じゃない』
「それは「周り」の話だろ?俺はんなこと言ってねぇ」
『でもユーリは責任取るために僕と居るって言った、
 あの時はただ、傍にいてくれるから嬉しかった、でも こんなにユーリに我慢ばっかりさせて
 僕はどうしたらいいの?責任を背負うなら僕の方だった、
 ユーリにはユーリの幸せがあったはずなのに全部我慢させて、こんなことなら僕あの時』
「フレンっ!!」
そこまで書いてユーリはノートを勢いよく奪い取った。
いつもと違って荒々しく書き綴られた文字。
バサッと地面に落とされた音がしたと思ったらユーリがフレンを抱きしめた。
「何書こうとした、お前…」
「………」
だって…そうじゃないか…
あの時から…僕は何の為に生きてるのかなって、考えるようになったんだ。
僕が生きてて嬉しい人なんて、いるんだろうかって…。

人魚姫が泡になって消えるように、僕も消えれたらって…
何度も何度も、そんなことを考えた。

腰を抱いたままユーリはぽろぽろと涙を零す目を左手で拭ってやりながら話始めた。
「…確かに、あの時俺は「責任」って言葉を使った…けどあれは…ガキだったから…
 それがどういう風にお前にとられるかなんて考えてなかったんだ」
「………」
「責任も全く感じてない訳じゃなかったけど…」
フレンが目をギュッと瞑る。
覚悟をしていたはずなのに、怖くて、その一言を聞くのが怖くて、
そうしないと前に進めないと、けじめを付けたのは自分からなのに…。
「…フレン、俺がお前の傍にいたのは責任を感じてた訳でもないし、我慢もしてない…
 もっと…自分勝手な理由なんだ…」
「………」
ゆっくり目を開けてユーリを見た。
その表情はまるで、今から罪を懺悔するかの様だった。




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とらさまのネット委託分が売り切れてしまったようなので追加委託させていただきました。
ありがとうございますありがとうございます!!!
近いうちにまた通販が始まる…はず…。よろしくお願いいたします。。。
店舗分はまだあるみたいなんですがとりあえず委託。
あまりはインテに持っていきます~~

そして新刊のネタをまた考えなければならない。勢いって大切。
13


フレンの腕を掴んだユーリの手は震えていて、力加減が出来ないのか凄い力だった。
それでもフレンは顔をしかめることなくユーリを見る。
なぁに?と首を傾げる。
「……俺が…」
「………」
「俺が傍にいることは…お前に取って重荷にならないか…?」
「………」
フレンは再び首を傾げた。
「…俺は……お前の声を奪った…張本人だし…
 お前の…傍に居たらお前苦しむんじゃないかって……」
「……」
フレンはユーリに手を離すように優しくその手に触れる。
ユーリは込められていた力を漸く解く。
腕はジンジンと痛んだけれど、フレンはその手でペンを握り、ノートに文字を書く。
『ユーリは悪くないよ。僕が声を無くしたのはユーリのせいじゃない。』
「いや…俺があの時ちゃんと回りを見ていればあんなことにはならなかった」
『でもユーリが飛び出さなかったら彼は生きていないかもしれない。
 そしたらユーリは飛び出さなかったことを後悔するだろ?』
「…そうかもしれねぇけど…でもお前の声がなくなったのが俺の所為ってのは変えられない」
『僕も生きてる。』
「…でも…」
『ユーリのおかげだよ、皆生きてる。』
「……それじゃ俺は……」
ユーリは俯いてしまう。

君にこんなに重い責任を感じさせてしまうくらいなら…
僕は生きていない方がよかったのかなぁ…

「…お前に…嫌われたくないんだ…」
まるで、泣いているような切実な訴えだった。
『僕ユーリを嫌ってなんかないよ?』
「…俺…お前に何もしてやれないままじゃ……嫌なんだよ…お前が悲しそうな顔すんの…」
『してないよ?』
フレンが微笑むとユーリは拳を握った。
「だからっそんな愛想笑いとかすんな…っ!」
「………」
フレンの表情はうっすら口元に笑みを残したまま固まる。
「俺の所為だ、お前にこんな辛い思いさせてる…俺は…責任取りたい、
 お前がいいって言ってくれるなら傍に居たいんだ…っ」
ユーリはゆっくり体を近付けてフレンを抱きしめた。
「嫌じゃないなら…前みたいに傍に居させてくれ…」
「………、」
フレンはそっとユーリの背中に手を回し、ポンポンと優しく叩いた。

責任なんてないのに。
ユーリはきっと自分の傍に居ることで償おうとしているんだ。
そしてそうしなきゃユーリは一生このことで自分を責め続けるんだろう。


ちゃんと話し合えば良かった。
責任なんて言葉を使わなくても傍にいたいと言ってくれるのを待てばよかった。
この時思った以上に心が弱っていたフレンはユーリの言葉に縋ってしまった。
傍に居てほしいと手を握り返してしまったのだ。


二人の距離は近付いた。


その分心は遠退いた。
12


「……フレン」
ごみ箱を置いて微動だにしなくなった彼の名を呼んだ。
「…お前…いつから居た…?」
「………」
聞いてたんじゃないかと、思った。
ゴミを捨てに行ってなかなか帰ってこなかった。
気になって教室に残った。
どこかで一人、泣いているんじゃないかと。
自分はその話に加わっていた訳じゃないけどその場に居たし、止めなかったのも事実だ。
ユーリはフレンがどんな表情をしているのか見るのが怖くて、こくりと唾を飲み込んだ。
フレンは暫くの沈黙の後漸く振り向いた。
微笑みながら首を傾げる。
何が?とでも言う表情でユーリを見る。
いつもの表情。
いつもの…作り笑い。
フレンは声が出せなくなってからそういう笑い方をするようになった。
相手を窺うような。

そのまま机の上の鞄を手に取って鍵を見せる。
閉めるから出て、と促されてフレンを微妙な顔で見詰めていたユーリは言う通り部屋から出た。
カチャン、と鍵がかかった音がする。
じゃあね、と手を振ってフレンは一人鍵を戻しに職員室へ続く廊下を歩いて行った。


暫くしてからユーリは漸く歩き出す。
時間を空けて帰ればまたフレンと会えると思ったから。
しかしユーリがフレンを見つけたのは帰る後ろ姿ではなく階段で一人うずくまる背中だった。
今度こそ、泣いていると確信した。
目から涙は出ていないかもしれないけれど。
ユーリはトントンと階段を降りてその小さな背中に近付く。
「…やっぱ…聞いてたんだな…」
「…………」
フレンは何も言ってはくれなかった。
ユーリは少し間を空けて同じ段の階段に座った。
「……悪かった」
「………」
フレンは少し顔を上げてノートに文字を書く。
『なんでユーリが謝るの?』
「…止めなかったから…」
「………」
『止めてどうなるの?』
「…どうって…」
『皆口では言わないだけで心の中でそう思ってる。僕だってそんなことわかってる。
 ユーリだってそう思ってる癖に。僕に無理に構わなくていい。先帰って』
荒い筆跡で書きなぐってユーリに見せる。
目は向けない。
そうしてまた頭を腕の中に引っ込めた。

ユーリはただ黙って傍で座っていた。

フレンが漸く顔を上げたのは下校の音楽が聞こえてから。
その間、1時間だか2時間だかをユーリはずっと、何も言わず傍に居た。
無言で立ち上がったフレンにユーリは「帰る?」と尋ねた。
フレンはこくりと頷く。

無言のまま下駄箱まで来て、フレンはノートに文字を書いた。
『今日はありがとう。』
「…いや、何もしてねぇし…」
フレンは首を振る。
『傍にいてくれて嬉しかったよ』
「………」
フレンは寂しそうに、嬉しそうに笑った。
『今日だけで十分。明日からまた普通にしてくれたらいいから』
「…普通って…?」
「………」
『僕といない方がいいよ』
「……」
『また明日』
フレンはパタンと下駄箱を閉めて一人歩き出す。
それを追いかけて腕を掴んだユーリの手は震えていた。



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今日のイラストない方がましだったと思う。

時々あるんですよね。これないほうがいいだろって思うことwww
すみません。
11


一ヶ月後。
フレンは病院を退院した。
一人浮かない顔で通学する。
あれからユーリは来なくなった。
代わりにクラスメートが何度か来てくれたけどフレンが声が出せないのだと知ると
みんな次の日から来てはくれなくなった。
最後の2週間は一人、ベッドの上で過ごした。


退院だと告げられても、全然嬉しさなんてなくて、
ただみんなに会うのが怖いだけだった。


先生だって、腫れ物を触るような対応をし、何かと特別扱いを受けた。
大丈夫?しんどくない?何かあったら言ってね。
どんな優しい言葉を掛けて貰っても、彼等の目は自分から逸らされていて空しいだけだった。


「気遣うよね~」
「そうそう、私次フレンと日直なんだ~、きっと仕事全部私がすることになるんだよ」
「声が出ないだけで先生も優しいしさ~、得だよね~」


「………」
ゴミを捨てに行っていたフレンは偶然クラスメートの会話をきいてしまった。
何も感じなかった。
ただ今入るとみんな余計に気を遣われるんだろうな、と思ったから、フレンはその場に立ち尽くした。
そう思われているのは知ってる。
だから今更何も感じない。
例え、その教室の中に、彼の姿を見付けたとしても。
当たり前。彼だけ特別なんて思わない。
暫くすると教室から話していたクラスメートが出て来た。
楽しそうに、笑いあって。
少し離れた階段に座って待っていたフレンはさも今帰って来たんだというのを装いながら近付いた。
「あ、フレン…っ遅かったね、何かあった?」
「………」
フレンはにこりと笑って首を振る。
「そ、そっか。あ、私たちもう帰るんだ、フレンも帰るでしょ?私たち待ってるから…」
フレンはノートを取り出して文字を書く。
『鍵はかけとくから先帰っていいよ』
「え、そ、そう?じゃお願いね」
クラスメートはフレンに鍵を渡すと走って行ってしまった。
そんなに走って行かなくても追いかけたりしないのに。
フレンはごみ箱を持って教室に入る。
ごみ箱を定位置に戻して、急に胸が締め付けて、動けなくなった。
今までここに居た人達の声が頭の中に響いてくる。
何も感じてないからって、声が聞こえてない訳じゃない。
皆がそう思ってるって知っているからって、受け入れられている訳じゃない。

カタン、と誰も居るはずのない教室の中から音が聞こえた。
振り返ることが出来なくてその人が早く出て行ってくれることを願った。
気づいていた、彼がまだ教室に居ること。
さっき出ていった生徒たちの中に彼の姿はなかったから…。
10


フレンは真剣なユーリの瞳に圧倒されフレンは思いを白状することにした。
隠し事は出来ない。
『ユーリ覚えてる?』
「なに?」
フレンがゆっくりノートに全てを綴り出した。



喉の手術をして暫くしたころ、ユーリは漸く病院に見舞いに行った。
「……」
よぉ、とか軽く挨拶しようと思っていた。
そうしたらフレンは「まったく君は…」って怒り出すに決まっていたから。
なのに病室のドアを開けて、窓の外を眺めるフレンがとても儚く見えて、
消えてしまいそうで、声が喉から出なくなってその場でただ立ち尽くしてしまった。
そんなユーリに気が付いたフレンはユーリを見付けるとふわりと優しい笑みを送った。
その瞬間金縛りから解放されたユーリは焦りながらフレンに近付く。
「な、なんだ元気そうじゃん。あの時すげぇ血出てたし焦ったじゃねぇか…」
「………」
フレンは近付いてくるユーリに微笑み続ける。
「…いつ退院出来んだ?」
「………」
「…何とか言えよ、やっぱ怒ってるか…?」
「………」
「…そりゃそうだよな…俺のせいでこんな…」
フレンは首を横に振った。
枕元に置いてあったノートを手に取り何か書いている。
『ユーリは悪くないよ』
「……お前…なに…なんでそんな面倒なことしてんの…?喋れば済むことだろ…?」
『ユーリ、落ち着いて』
みるみるユーリの顔は青くなる。
「い、いつもみたいに言えばいいだろ、俺が悪かったんだ、覚悟は出来てる」
『ユーリは悪くないよ』
「喋れっつってんだ!」
ユーリはフレンからノートを奪い取って投げ捨てた。
床にバンッと音を立てて叩き付けられたノートをフレンは無表情で見ていた。
「……声…聞かせて…くれ…フレン、頼むから…っ」
ユーリが俯いて手で額を押さえ付ける。
悲痛な叫び。
しかしフレンにそれを聞き入れてやることは出来なかった。
無言でいるフレンにユーリはゆっくりと視線を向けた。
目には涙の膜が張っている。
「…どうしたらいい…」
「……」
「…俺はお前に何をしてやればいい…」
「……、」
フレンは首を振る。
そんな考えは必要ないと。
「っ、どうしたら許してもらえる!?」
フレンは更に強く首を振った。
違う、誰もユーリのこと怒ってなんかないっ
どうしたら、この想いを伝えられる!?
ノートはユーリに取られて手元にはない。
大好きな人が苦しんでいても自分には安心してと伝えることも出来ない。

無力だ…。

首を振り続けて、段々それが力無いものになって、
フレンはぽたりと涙を落とした。
ユーリはそんなフレンから逃げるように病室から出て行った。
9


後ろから近付かれて優しくそっと包み込んでくるその手に、一瞬どんな女たらしが来たのかと思った。
その手慣れた感じが少し寂しい。

フレンは顔を赤くしてユーリを見る。
「これ、お前が入れたんだよな?」
ユーリは指輪を見せる。
フレンはこくりと頷いた。
「なんで?これ俺がお前にあげたやつだろ?」
「………」
シミュレーションはばっちりした。
ユーリは無理しないで、とか、責任なんて感じないで、なんて言うと余計反発するのだ。
『いらなくなった』
はっきり書かれた言葉にユーリは眉を寄せる。
「なにそれ?」
『もう子供じゃないんだしそんなに構ってもらわなくても大丈夫』
「………つまり俺がうざいってことか?」
「………」
そうはっきり言われると語弊があると感じたがフレンは頷いた。
ちくりと心臓を針で刺したような痛みが走る。
何度も何度も頭の中でやり取りを想定していたのに、やはり本人を目の前にすると全然違う。

ユーリはとても魅力的な男性になった。
自分に関わってないで自由になってほしい。
ユーリがたくさんの女の子に告白されているのを知ってる。
エステリーゼさんと噂になってるのもしってる。
僕さえいなければユーリには当たり前の幸せがあったはずなのに…。
我慢させて自分との関係を続けていかせることは出来ない。

だからあまり追及しないでほしい。
もう崩れてしまいそう。
嘘はあまり得意じゃない。
素直に頷いて、お願い…。

フレンは唇を噛み締めてユーリを見据える。
「俺と離れて誰か一緒に居たい奴でもいんの?」
フレンは首を横に振る。
「じゃあいいだろ、俺が一緒にいても…」
フレンはまた首を横に振った。
「お前が本当に傍に居てほしいと思う奴が出来るまででいい…」
そんなものを待っていたら一生離れないことになってしまう。
ユーリ以外に一緒に居たい人なんていないのだから。
フレンは勢いよく首を振った。
「なんで?何か気に障るようなことしたか?なんでいきなりそういうこと言い出すんだ?」
「………」
こんな態度をしてくるのは想定外だ。
そんな寂しそうな顔しないでくれ
フレンは心の中で叫んだ。

『ユーリよく告白されるじゃない。付き合わないの?』
「……何が言いたいの?お前、今んな話してねぇんだけど」
『付き合ってみたらいいのに、僕に遠慮して断ることなんかないよ』
「…お前から離れて女と付き合えってこと?」
『僕が女の子にモテないから同情してるんでしょ、僕だってきっとそのうち素敵な人見つけるよ
 だから気にしないで。いつまでも子供じゃないんだし一緒にいなくても』
「フレン、やめろ……わかったから…やめろ」
「………」
ぽたりと、ノートの上に雨が落ちた。
ぽたぽたぽた…
ノートの上にだけ降り注ぐ雨。
ユーリに頬を拭われて、初めて自分の涙だと気付いた。
「フレン、ごめん…ごめんフレン…俺、そういうこと我慢してお前と一緒にいるわけじゃねぇんだ…
 お前にこんな辛い思いさせてたんだな…本当にごめんな…」
「…………、」
「俺も全部話すから…お前も全部話して欲しい…
 ちゃんと、話し合おう、俺と離れるかはそれから決めてくれ」
ユーリの懇願するような瞳にフレンは無意識に頷いていた。
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