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18


「おはよう」「おはよう」
生徒たちの元気な声がこだまする。
「ユーリ・ローウェル!ネクタイ…っ………」
風紀委員の副委員長はユーリの姿を見つけてそう叫んだが首もとを見て言葉を失った。
「…してるっつの…」
しっかり締められている訳ではない。
緩くだらし無く締められたネクタイ。
だがしっかりそれが首もとに巻き付いていた。
「…ち、ちゃんと締めろ!」
「うっせ」
ユーリは相手にするのも面倒だと言うように手をヒラヒラと振ると校舎に入って行った。



風を感じる。
屋上に来たユーリはぼーっと空を見上げた。
卒業も近い少し肌寒い季節。
ふわりとあいつの匂いがした。
首元に引っかかっているだけのネクタイを手に取ると口元に当ててその香りを嗅ぐ。
あいつの匂いが染み付いたネクタイ。


あの日、フレンを看送ったユーリは
穏やかな表情のまま動かなくなった彼を暫く何も言わずに見詰めていた。
目を開けていつもの様に小言を漏らしそうなほど
顔色のいいそれを見ていると彼の言葉が、声が、リアルに蘇った。
傍らに掛けられた制服はきっと学校に戻る希望を捨てられなかったのだろうと推察出来た。
立ち上がってそれに近付いて、いつもピシッと締められていたネクタイに手を伸ばした。
「…貰ってくわ…」
物言わぬ彼に向けて言うと微かに笑ってくれた気がした。
最後にもう一度、目に焼き付けるように彼を見詰めて、窓から部屋を出た。



「……天国かぁ……なぁどんなところなんだ…?」

「俺は行けんのかな…」

「俺が行くまでちゃんと待ってろよ」

「そしたらいっぱいデートしような」



彼に掛けた言葉は青い空に吸い込まれて行く。

君と同じ青が、胸を締め付けた。



天国では、病気だって治ってるだろう?
もう面倒なこと色々考えなくてもいいだろう?

だったら、なぁ、


次会う時には、ちゃんと返事くれよ。




-----------------------------------------------------------------------------------

これにておしまいおしまいです。

次回は騎士団時代の二人です。
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17


何も言わずに抱き合った。
お互いその存在に縋るように。
暫くそうして抱きしめ合って、ユーリが「なぁ」、と呼び掛ける。
「…ん?」
耳元じゃなかったら聞こえないような、小さな声で返事をする。
ユーリが少しだけ顔を離した。
「…返事ちょーだい」
息もかかる距離。
見詰められる視線から目を離せない。
「まだちゃんとくれてないだろ、告白の返事」
「…君は…何がしたいのかよくわからないな、ほんと…。
 もうすぐいなくなる人から返事をもらってどうするんだ…」
「…いなくなるなんて言うな」
ユーリは怒りを篭めて言う。
なのに声は泣きそうに弱い。
わかっている。
ユーリだってフレンがもうだめなことくらいわかっているのだ。
ただ声に出して言って欲しくない。
最後まで諦めないでほしい。
フレンは「ゴメン」と呟いた。
「…お前が欲しいんだ…」
「……」
「…お前の全部を俺のものにしたい」
例えそれが一時のことだったとしても…。
「好きだって言えよ」
「…自信家だな…」
「お前が俺のこと好きなことくらいわかりきってるんだよ」
「……ふふ、隠してるつもりだったんだけど…」
フレンはおかしそうに笑った。
「全然隠せてねぇから。お前って案外天然だよな」
背中を震わせて笑うフレンの感覚を覚えるように、忘れないように、少しだけ腕の力を強めた。
「…言えよ…」
「あはは……はぁ…」
一通り笑ったフレンは漸く落ち着いて綺麗な微笑みをユーリに向けた。
「…言わないよ」
「……」
ユーリはムッとフレンを睨むがフレンは穏やかな表情のまま話を続ける。
「ユーリ、僕が死んだら、僕のことは忘れてね…」
「……笑えねぇんだけど…」
「笑うとこじゃないからね」
そっと目を閉じる。
幸せそうな…。
「ユーリといるとね…胸の痛みをあまり感じないんだ…違う感情の方が勝っちゃうからかな…」
「…だから好きなんだろ」
「………どうだろうね…」

ユーリ…


君は幸せになってね


君は自由が似合うよ


こんなちっぽけな人間に縛られている必要はない



幸せそうな笑顔で

母親と、たった一人あなたの幸せだけを祈って



そのまま、フレンが目を覚ますことはなかった。



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フレンのご両親はどこ行ったって感じですが。
あまり裕福ではない母子家庭で
今も働いて治療費稼いでいる途中とかそういうイメージですね。


絵が描けなくて困った。
16


暗い天井を眺める。

天国はどんなところだろうか…

その前に天国に行けるだろうか。
ユーリに酷いことを言って…無理かもしれない。

あの世では病気は治るかな。
薬を飲まなくても普通に過ごせるかな。
何も気にせず、遠くに行けるかな…。

でも君がいないから意味ないか。

………案外もう天国だったりして。
現実とそんな変わらないな…


体に付いている色んなコードは複雑な機械に繋がれて、規則正しい音を刻んでいる。
慰め程度の延命治療。
自分の体がどれだけもつかなんて、わかっている。
今もキリキリと心臓が痛んでいる。
朝から大きいのと小さい発作の繰り返し。
もう…ダメなんだろうな、と他人事のように考える。


「…………」

ユーリは…元気だろうか。
服装相変わらずなんだろうな。
ソディアには頼んどいたけど僕がいなくなって直ってたらそれはそれで悔しい。


会いたいな…

でも会いたくない…
会ってしまったらきっと……


その時、窓の外から部屋に差し込む光がふっと陰った。
なんだと窓に目を移すと窓がガラッと空いて誰か入って来た。
それが誰かなんて、自然にわかってしまってカーテンを退けて漸く見えたその顔に
フレンの胸の痛みはふっと軽くなる。
「…よ」
軽く片手を上げて入って来たその人に思わず頬が緩む。
「…君はどこから入って来てるんだ」
「もう面会時間終わってるって。」
「だからって…」
「悪かった…遅くなった」
「………」
見詰められて言われた言葉に思わずキュンと胸が締め付けられた。
今の体には毒だ。
余計苦しい。
「泣くなよ…」
目元を拭われ、その時漸く涙を流しているんだと気が付いた。
「…来て欲しくなかった…」
ぽろぽろと目から涙を零しながらユーリを見上げる青い瞳。
「…俺は会いたかった。会いたくて会いたくて仕方なかった」
「……」
そっと、優しく抱きしめられた。
優しいのに、決して離れないような強さがある。
「…会ってしまったら…」
ゆっくりフレンの手がユーリの背に回る。
ギュッと握り締めたらもう離せない。
引き寄せられて離せない、まるで磁石の様…。
「…っ会ってしまったら…離れるのが辛くなる…っ」
「安心しろよ…離してなんかやらねぇから」
「………」
フレンは縋るように掴む手に力を篭めた。
15


「……なん…」
「今日の朝から体調が急変して…軽い発作が何度も起きてる。もう…時間はないわ」
「………」
強い光を持ってユーリを射抜く視線。
目を逸らすことさえ許されない、緊張感がその場を包む。
「本当はあなたに任せようと思ったけれど…意外に弱虫さんみたいだから言いに来たわ」
「…弱虫って…言うけどな…」
弱々しくユーリが言い返そうとした言葉の続きをジュディスが口にする。
「来るなって言われたのがショック?本気で拒まれたらどうしようって考えてる?
 彼が衰えていくのを見るのが辛い?確かに彼は痩せてしまったわ。けれどもそれも彼なのよ。
 仕事や女に逃げて心は楽になった?それで埋まった?だったら何故そんな表情をするのかしら。」
「…………お前にわかるわけねぇだろ…俺の気持ちなんか…」
「わからないわ。私逃げるの嫌いなの。」
「………」
「本気であなたを拒んでると思ってる?あなたに来るなと伝えてくれと言った時…
 彼は無表情だったわ。ただ空を見て…遠くを見詰めていた…
 まるで心をどこかに忘れてきてしまったように…。」
「………」
「彼だって同じ。自分が弱っていく姿を見せたいとは思わないでしょう。
 あなたに側に居てほしいと言って、あなたがもしも拒否したら彼はきっと立ち直れないでしょう。
 彼はあなたより不安なのよ、記憶に残るあなたの姿を思い浮かべて、今まで生きてきた」
「………」
ジュディスは一通り話すとふぅ、と一度息を吐く。
先程までの威圧感はないが瞳の光は消えずにユーリを見詰める。
「今までも発作はあった…けど…きっと今夜だわ…あなたの後悔の無いようにしてちょうだい」
そう言い残すとジュディスは振り返って歩きだした。

最期……

その言葉が重くのしかかる。
今夜を逃せば…きっとあいつには一生会えないのだろう。


どうして今まで自分のことしか考えなかったんだろう。
考えればわかることだ。
あいつは強がってはいるが本当は弱いのだ。
薬だって隠れて飲むし誰かと付き合おうとしないし告白の返事はまともにくれないし…
あの日、不安を感じて俺を引き止めたのはあいつの無意識の弱さだったのに…

もう答えが出ていると言うのに、足はなかなか進んでくれなかった。
14


拒まれたから行かないわけじゃない。

逃げたのだ。
ユーリは逃げた。
病室で寝たきりになってる彼を見たくなかった。
どんどん弱っていく彼を見たくなかった。

治る治ると彼に言い続けてきて、結局それは自分に言い聞かせたことで、
彼の病気をただ認めたくなかっただけ。
いざ現実を目の当たりにして、逃げ出す自分がいる。

いっそ忘れたいと思った。
皆と同じように、あいつは普通に転校して行ったんだとそう思いたかった。




「お前また彼女にフラれたんだって?」
「…どっから聞いてきたんだよ…」
ユーリは顔を顰めて友人を睨んだ。
「そういう噂はすぐ広まるもんなんだよ。それにしても長続きしねぇな」
「…知らねぇよ…何考えてんのかわかんねぇし…」
「わかんねぇんじゃなくて、わかろうとしてないんだろ?」
「…はぁ?」
友人が言うことにユーリは強い口調で聞き返した。
「委員長のことが忘れられないんだろっお前って意外と一途だよなぁ」
にやりと笑みを向けられて「かわいい奴だ」なんてしみじみ言われて、ユーリは更に眉に皺を寄せる。
「そんなんじゃねぇ」と言うと「急に転校なんかされて可哀相に」と聞く耳を持ってくれなかった。


はっきり付き合っていたわけじゃない。
俺はあいつに好きだと告げた。
あいつもそれに応えてくれた。
時間があればいつも一緒に居たし、一度だけどキスもした。
だけどあいつからは「好き」だとか「付き合おう」だとか、そういう言葉を聞いたことはなかった。
実際、どういうつもりで自分と居たのかわからない。


会いに行こうと思えばいつでも会いに行ける。
ただ、「会いたくない」と言った彼の目が、どんな色を持っていたのか知るのが怖い。

忘れようとした。
忘れてしまえば楽になると思った。
ユーリは来るもの拒まず、告白してきた女と次々に付き合った。
しかしぽっかり空いた心の穴はどんな彼女が出来ても埋まらず、
ついにはそれすらやめてひたすらアルバイトで働き続けた。
忙しく動いている時だけ、あいつのことを忘れられた。

そんな生活をして1ヶ月。

アルバイトに行こうとしていたユーリを校門で待伏せたジュディスは、
強い視線をユーリに向けて言ったのだ。


「今夜が最期かもしれない」と………。
13



「ネクタイ!」
「………」
「ボタンも閉めろと何度も…っ」
「…うっせー、っつーか誰」
ユーリは校門で怒鳴ってきた人物をじとりと睨んだ。
髪を右側だけ小さく三網みした吊り目の女性だ。
女性は「誰とはなんだっいつもここにいただろ!」と文句を言う。
知らないもんは知らない。
フレン以外の風紀委員なんて覚えてるわけねぇだろ。
「私は風紀委員副委員長で…」
「んなことより」
被さる様に声を出したユーリに「お前が聞いたから答えてやってたんだろ!」と
女性の怒りは更に上がる。
「フレンは?」
この副委員長の名前なんかどうでもいいのだ。
フレンが見当たらない。
かわいい瞳で自分を睨んで小言を漏らす彼が。
副委員長らしい女はしばし言うのを躊躇って、納得いかない表情で声を出す。
「………私も昨日夜に聞かされたんだが…委員長は急な引っ越しで転校された。」
「は?」
「お前のことは委員長から頼まれている。これからは私が…」
喋っている内容が頭に入って来ない。
転校?
違う
それって学校に来れなくなったってことで…
「発作が…発作が起きたのか!?」
副委員長の両肩を掴み叫ぶように問い詰めた。
何を言っているのかわからず困惑の表情でユーリを見上げる副委員長。

そこにやって来たのはブラスティア工学の保健医、ジュディスだった。


場所を保健室に移した。
彼女はフレンの主治医の教え子らしく、ここでフレンを診察し主治医に伝えていたのだ。
「…昨日の夜…大きな発作があって入院したわ」
「……」
聞きたかったことをいの一番に言われて、頭が付いていかなくて真っ白になる。
「もう…ここには戻れないかもしれない…」
「………」
「ここまで生きられたのもすごいことなのよ、彼の病気は…そのくらい彼を蝕んでいた…。」
何も頭に入って来ない。
ユーリの中には毎日校門前で生徒に指導する元気な姿しかいなかった。
確かに最近薬も効かなくなっていて…
辛そうにしている姿だって何度も見た。
でも…そんな突然…
昨日まで今までと変わらず、「また明日」と手を振ったのに…
「あと…」
ジュディスの視線が冷たく感じる。
「あなたには来て欲しくないって。」
「……」
ユーリは一瞬何を言われたのか理解出来なくて眉を寄せてジュディスを見詰めた。
「もう会いたくないんですって。
 一応病院の場所と部屋番号は教えておくから…行くも行かないも任せるわ」
「…………」
一度聞いたその情報は勝手に頭の中に焼き付けられる。

しかしユーリは、そこへは行かなかった。
12



季節は巡る。

このまま時が止まってしまえばいいのに…。
そうすれば、君と一緒に居られる…
いつまでも…

いつまでも…。



「…顔色、あんま良くねぇな…」
「…そう、かな…」
「苦しいのか?薬は…」
「飲んだよ」
「…そっか…」

階段の裏の隠れたスペース。
そこは二人の秘密の場所になった。
毎日毎日、放課後二人はそこで身を寄せ合う。

薬の効き目は、日に日に弱まっていた。
数はもう、増やせない。
これ以上増やしても逆に体に良くないと言われてしまった。
「んじゃすぐ効いてくんな。もう少しの辛抱だ」
ユーリが手を握って微笑んでくれたからフレンもそれに応えて笑みを返す。
辛いのに、ユーリとこうしていると暖かくって、体が少し楽になるような気がする。
ユーリだって、薬の効果が段々遅くなっていることには気付いていた。
しかしどうすることも出来ないのだ。
ただ、隣で手を握ってやることしか出来ない。
励まして、励まして、病は気からという言葉を信じるしかない。
どうか、このままこいつが遠くに行ってしまいませんように、と祈るしか出来ない。

「…ありがとう、楽になってきた」
暫くして、漸くフレンが笑みを向けてそう言った。
「ん」
ユーリは小さく頷いただけで手を離そうとはしなかった。

「ユーリ」
「ん?」
「毎日こんなとこに居て退屈じゃない?」
「別に?なんで?」
「ユーリは…あちこち出掛けたりするの好きそうだから」
「場所なんかどこでもいいんだよ。居たい奴と居るだけだ。」

きっと、ユーリには元気な、笑顔が素敵な女の子が似合うだろう。
僕が死んだらその後は、そういう人を見付けてくれたらいい。

今だけだから…君を拒めない自分の弱さを許して……。


ユーリの優しさを感じて、目を閉じた。




あと何回君に会えるかな。




帰り道、別れの交差点。
「じゃあな」と頭を撫でるユーリ。
頭に暖かさを感じてフレンは無意識にユーリの服をくっと掴んだ。
「ん、どした?」
「…え?あ、いや何にも…」
「……」
「……」
ごめんと手を離す。
その手をユーリは追いかけて、力強く握ってくれた。
「……うち来る?」
「……、ユーリの…家…?」
「そ。」
「………………ん、また今度。薬も持ってないし…親も心配する…」
「…わかった。会いたくなったらいつでも呼べよ、すっ飛んで行くから」
そう言うとフレンは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう」
「また明日な」
「うん、また明日…」
二人は笑顔で手を振って別れた。


次の日からフレンは学校に来なくなった。
11


「よぉ」
「あ、おはようユーリ、ネクタイ…」
「忘れた。ちゃんと薬飲んで来たか?」
「ちゃんと飲んでるよ、ボタンせめてあと一つくらいとめてくれないか」
「気が向いたらな。今日放課後空いてるか?薬持って来てんならデートしようぜ」
「で……、……気が向いたら…」
「んじゃ迎えに行くから」
頭をぽんぽんと優しく叩いてユーリは校舎へ入って行く。

朝っぱらからそんな普段よりも濃いイチャイチャっぷりを見せ付けられた生徒たちは
出来るだけあてられないように目を逸らして登校した。



放課後、人気のない所に移動したフレンは薬の入ったケースをポケットから取り出した。
中から薬を取り出して3錠。
今学期始めの発作が起きる前までは2錠だったきつい薬は1錠増やされた。
確実に…病は体を蝕んでいた。
ふぅ、と一つ溜め息を吐く。
「みぃつけた」
「!」
後ろから声を掛けられて振り向いたら、ユーリが後ろから覗き込んでいて、
顔の近さに思わず体温が上がった。
「迎えに行くっつったろ。捜したぜ。……いつもこんなとこで薬飲んでんのか?」
「…まぁ…知られたくなくて…」
「ふ~ん…」
ユーリはフレンの隣に腰掛ける。
何をするわけでもなく、隣にいるだけ。
ここは一階で上り階段の裏の空間だ。
もともとこっちの階段は使われてなくて人は全くと言っていいほど通らない。
「よくここにいるってわかったね」
今まで誰にも見つかったことはない。
3年間、一度も。
フレンが言うとユーリも真剣な顔を向けた。
「あぁ。自分でもすげぇと思う。愛の力ってやつかな」
思わずぷっと笑ってしまった。
「エスパーみたいなんだね……どっか行く?」
デートだと言っていたからどこかに出掛けるのだろうと思っていたからそう聞いた。
「ん、いい。ここに居ようぜ」
「ここ?」
フレンは首を傾げる。
「誰も来ねぇし…二人っきりだ」
「………」
かぁ、と、また顔が熱くなるのを感じる。
「素直な反応で大変よろしい。」
ユーリはからかうようにそう言った。
フレンはムッと眉を寄せる。
「…、からかってる…」
「からかってねぇよ」
「からかってるだろ…」
「二人きりになりたいなぁと思って…」
「ほら、からかってる」
フレンはふいっと顔を逸らす。
そんな姿に苦笑してユーリは後ろからその肩を引き寄せて自分の方に倒れ込ませた。
景色がユーリと天井だけになって一瞬どういう大勢なのかわからなかった。
頭はユーリの足の上で痛くなかった。
「…なに…、」
見上げる様な形で文句を言おうとした口は、
見下ろすユーリの真剣な表情に次の言葉を紡ぐことは出来なかった。
「……」
「……」
何も言葉は交わさなかった。
ただ一度だけ、唇を重ねた。




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よろしくお願いいたしますvvv
サンプルが1頁しかなくてすみません、うっかりでした…(爆)
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