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「さて、と…楽しい楽しいお説教の時間だぞ」
「………はい…」
エステルの治癒術と数日間の療養で体はすっかり回復。
未だベッドから出ることは出来ずにいるが、話すことは出来るわけで。
ベッドの脇に足と手を組んで威圧感たっぷりで座るユーリの気迫にフレンは心なしか怖じけづいていた。
「普段俺に無茶すんなとか言いまくって自分はどうなんだ?」
「いや、あの時は…ソディアが人質に取られてるんじゃないかとかそういうのあったから…」
「言い訳は聞かねぇ」
「……ごめんなさい…」
潔く謝って漸くユーリはふぅっと肩の力を抜いた。
「…死んでたかもしんねぇんだぞ…」
今までにみたことの無いような、心配した目を向けられた。
「そうだね」
「そうだねってお前なぁ…っ」
「ユーリが見付けてくれるって思ってたよ。」
「…勝手に人を頼んな…」
「うん、さすがにもうダメかと思ってた。
いろいろ言っとけば良かったなぁって思うことが多くて困ってしまったよ」
ふふっと苦笑するフレン。
「言っとけば良かったこと…?って?」
「君はもうちょっと自分を大切にした方がいいとか、甘いもの食べ過ぎとか、
エステリーゼ様やヨーデル様に対する態度とか…」
あと…と指折り小言が続くフレンの言葉をユーリは慌てて止めた。
「っお前は死ぬかもしれない直前までくだらねぇこと考えてんじゃねぇよっ」
「ユーリが普段からちゃんとしてないからだろ、思い浮かぶのが君のことばかりでホント困るよ」
「どうせならカッコイイとかそういうこと考えろよ」
「ユーリって意外にナルシストだよね」
「洒落だろ、真に受けんな」
「うん、冗談冗談。」
フレンが笑うとユーリははぁ、と溜め息を吐いた。
「そんだけ冗談言えんなら大丈夫だな。」
「…心配かけてごめんなさい」
「暫くそうやって殊勝にしてろ。」
つんと頭をこついてユーリは立ち上がる。
「じゃ、まだ安静にしてろよ。あと皆にも謝っとけよ。すっげえ心配かけたんだからな」
パタンと閉じられる扉。
フレンはそれをただ見詰めた。
「…あの時声が出なくてよかった…」
もし出ていたら…最期だと思って言ってしまうところだった。
今回の件ではっきりした。
自分は幸せを望んではいけないと。
自分を怨んで死んでいく者がいる。
自分はそういう立場にいるんだ。
それが、僕が歩いている道だ。
「…ユーリ………」
伝えられない想いを込めて名を呼んだ。
この続きが言えるのは自分の命が終わる時。
それなら死ぬのも怖くないな…とフレンは目を閉じた。
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くっつかなくてすみませんでした。
次回は…なんでしょう…片想い?です。
全10話予定。
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バウルでザウデへ急いだ一行。
「フレン!」
ユーリは船から飛び降りる。
辺りを見るが人影はない。
「とりあえず手分けして捜しましょ」
レイウ゛ンの言葉で降りてきた全員が頷いて各々散って行った。
ラピードの後に続き足場の悪い岩場を捜す。
以前中に進入するのに使った排水溝。
それを横に抜けて奥の岩場へ。
そこで岩の陰から金色と青が静かに風にはためいているのを漸く見付けた。
「ワン!」
「!っフレン!」
呼びかけに反応はない。
駆け寄る。
その数メートルしか離れていない距離が酷く長く感じた。
「フレン!」
漸く辿り付いて前から覗き込むとやはりフレンだった。
咄嗟に口元に手を持っていく。
息はある。弱々しいが。
ユーリは強張っていた体から力を抜いた。
「おいフレン、しっかりしろ!」
体を緩く揺する。
「…………、…ん…」
微かに反応があった。
「フレン!待ってろ、すぐエステル呼んでくるからな!」
ユーリが立ち上がろうとするのを微かな声が引き止めた。
「ユー…リ…っ…て」
「あ?どうした?何か言いたいことあんのか?エステルに診てもらったら聞いてやるから」
ユーリがしゃがんでうっすら開いたフレンの目を見て言う。
「…ユー、リ……ゆめ、ない…?」
掠れた途切れ途切れの声しか出せないフレン。
衰弱した状態を見てユーリは息を呑む。
「夢じゃねぇっここで待ってろ、すぐエステル連れて来てやるから」
言い聞かせるように言葉を発する。
小さく頷いてまた目を閉じた。
いつもより遥かに儚く見えた。
この場を離れたらどこかへ消えてしまいそうな予感がして動けなくなった。
「ラピード、エステルを呼んできてくれ」
「ワン!」
ラピードはすぐ了承して駆け出す。
「待ってろ、エステル連れて来てもらうからな」
「………」
「おい?フレンっ、起きてるか?」
「………」
声は出せない様だったがこくりと頷いた。
反応があったことにホッと肩を撫で下ろす。
こんな所で、飲まず食わず、ボロボロの体の状態で5日…
触れると壊れてしまいそうでユーリは拳を強く握る。
「死ぬなよ!?元気になったら説教しなきゃなんねぇからな!」
ユーリが叫ぶとフレンは微かに微笑んだ気がした。
「なんっでもっと早くそこに辿り着かないのよっ」
リタがレイウ゛ンの頭を撲りながら怒鳴る。
「だっておっさんはそんな視線感じなかったんだもの~っ
でもよくよく考えてみるとちょっとそれ怪しいかもって…」
「なるほどな、親衛隊もおっさんがあのシュウ゛ァーンだとは知らねぇわけだな…」
そいつらはフレンの行動を監視していたに違いない。
「今までてっきりフレンちゃんのファンの子だと思ってたわ…」
「そう言ったのかの?」
パティの質問にレイウ゛ンは大きく頷いた。
「で?」
「うん、すごく微妙な顔してた」
「だろうな」
ユーリは呆れたように吐き捨てる。
「んなこた今はどうでもいいんだよっ相手が親衛隊で場所が限られてきたっつっても…」
「バクティオン神殿じゃない?縁あるし!」
カロルが言った。
「焦んな、アレクセイ縁の場所っつったらザウデもあるし帝都かもしれねぇ」
「ヘラクレスも怪しいわね」
ジュディが付け足した。
「あ、そっか…」
「だがどこに行くにも船は使うことになる。
ヘリオードから一番近い港はここトリムだ。まずは港で聞き込むぞ」
「わかった!」
皆は頷いて港に走った。
港で聞いて回る。
そこへ噂を聞き付けた一人の船乗りが近付いてきた。
「あの…あんたら騎士を乗せた船を探してるって…」
「あ?あぁ、なんか知ってんのか?」
「……じ、実は俺…5日くらい前に騎士に頼まれて…」
「!乗せたのか!?どこにっどこに乗せてったんだ!?」
「ひっやっ、やっぱりなんかまずい仕事だったのか!?やたら報酬が良かったから俺心配で…っ」
「いいからどこ連れてったか言えっつってんだっ!!」
「青年落ち着いて…っ怯えて言えるもんも言えないってばっ」
レイウ゛ンがユーリを抑える。
「僕たちその人を迎えに行くんだ、でも行き先がわからなくなっちゃって…」
カロルが落ち着いてうまく説明する。
「あ、…言われた通りに…進んだだけで場所はよくわからないんだ…
でっかいリングみたいなのがあって…」
「ザウデか…っ!」
ユーリが確信を持って言う。
「あれから5日、もしそこにいるなら自力での脱出は不可能、急いだ方がいいわね」
ジュディスが言うことに全員危機感を持つ。
急いでバウルでザウデに向かった。
「騎士団長が行方不明らしい」
「え、殉職したって聞いたぜ」
「任務や責任が重くて逃げ出したんじゃねぇの?」
「今回の団長って下町出身だって噂だしな。所詮それだけの人物だったってことだよな」
「あることないこと…噂って怖いわねぇ…」
レイウ゛ンが腕を摩りながら身震いする。
「言いたい奴には言わしとけ。あいつがそんな簡単にくたばるタマかよ」
「でもフレンどこに行ったか全然わかんないんだよ?」
一蹴したユーリにカロルが心配そうに言う。
「もし…本当に……」
「や、やめてくださいっフレンは生きてます!」
エステルが聞きたくないと首を振る。
「…あいつが居なくなってもう5日…森や山で遭難でもしてんのかしら…」
「だとすると捜し出すのは困難ね」
リタの意見にジュディが続く。
「せめて大まかな場所がわかればのぉ…」
パティの言葉に全員が溜め息を吐いた。
「だからこうして聞いて回ってんだろ!くだらねぇ心配するより足動かせよっ」
フレンがあの騎士にどこかへ連れて行かれたのは間違いない。
どこに?
あいつらは誰なんだ?
フレンはあいつらのことを知っていたに違いない。
知っていて…付いて行った。
恐らくソディアが人質にとられていると考えて。
フレンがいなくなってから5日。
最悪の事態は考えないようにして聞き込みや怪しい場所へ乗り込んだり、
手を尽くしてフレンを捜索していた。
「おっさんちょっと気になってることがあるんだけど…」
レイウ゛ンが控え目に手を挙げたのは捜索を開始して数時間経った頃だった。
「あ?なんだよ」
「…実はフレンからちょっと相談受けてたのよね、おっさん」
「…は!?」
初耳のことにユーリを筆頭に全員の視線がレイウ゛ンに向けられた。
「最近視線を感じるって。」
「…視線…?」
「そ。戦闘中も気になって集中力途切れてたみたいだけど…」
最近フレンは戦闘中に怪我をよくするようになったのは確かだ。
気が散漫になってるとは感じていた。
「でも何でおっさんに?」
リタが怪しむ。
「まぁおっさんもそこは気になったのよ、珍しいなぁと…」
「フレンにはうちが一人で悩むなと助言をしておいたのじゃ!
言い付けを守ってくれたんではないのかの?」
「どうだろうね~、
ただ気になったのは内容が「レイウ゛ンさんは見られてる感じしないですか?」って。」
「なんでそいつらがおっさんを見んのよ?」
リタが言う。
「うん。…今から思えばフレンちゃんは自分と俺様に関係ある人物が見てるんだと
確信してたように思うわけよ…」
「おっさんとフレンに関係ある人物?」
「そして怨みを持っている…おっさん心当たりが一つあるのよね」
「まさか…」
「…やっぱアレクセイ親衛隊…よね…」
疑わしいいくつもの点が確信に変わる。
フレンと別れて数日後、オルニオンに着いた一行はギルドや騎士団やらに集めた物資を渡した。
「いやぁホント助かるよ、ありがとう」
「いいっていいって!街も大分活気づいてきたね!」
「お蔭様でね、人も増えてきたし嬉しい限りだよ」
「頑張ってね」
カロルが言うと「まかせとけ」と腕をぐるりと回した。
「ユーリ!物資渡してきたよ!」
「おぅ、お疲れさん」
街の入口のこの街のモニュメントとも言える存在である魔導器の残骸。
その近くで待っていたユーリは手を軽く振ってカロルに答えた。
「あ、凛々の明星のみなさ~ん」
そこへ手を大きく振りながら駆け寄ってきたのは騎士だった。
「ユーリ元気そうだな!」
「………」
「…お前まさかまた俺のこと忘れたんじゃねぇだろな…」
「いや、覚えてる覚えてる、えーっと…あ…あ~アシェット!」
「アグエロンだ!」
「あぁそうそう。で、なに?」
アグエロンは気を取り直して話始める。
「ったく…えっとな、お前らが寄ったら宿でゆっくり休んでもらうようにって」
「えっホント?それってタダってこと?」
カロルが食いつく。
「あぁ。おたくらには世話になってるしな」
「やったね、ユーリ!」
いくら仕事をしても情やなんやかんやでただ働き同然になってしまうことが多い
凛々の明星の財布を握るカロルは100ガルドの節約でもやたら喜んだ。
「あぁ、そりゃありがたいんだけど…それ命令したのって誰だ…?」
ユーリが眉を顰めながら聞いた。
「誰ってフレンがお前らと行ってる今、ここを指揮してる…」
「私だが」
アグエロンの続きを自ら答えてそこに立っていたのは…
「あっフレンの…っ」
忠実な副官、ソディアだった。
「…やっぱりな…」
ユーリが「ちっ」と舌打ちする。
「なんだ、私だと何か問題か?それより隊長は?一緒ではないのか?」
敬愛する隊長をさがしてきょろきょろするソディアにカロルやエステルは目を丸くする。
「え、あれ、怪我は…」
「怪我?」
「はい、あ、誰か腕のいいお医者様に診て頂いたのです?」
「す、少しお待ちください、私は怪我などしておりませんっ」
「え、だって…フレンは…ねぇユーリ!」
カロルが振り返る。
ユーリは拳をきつく握った。
治癒術はかけるべきだろうか。
体力を温存すべきだろうか。
長く生きながらえば…彼が来てくれるだろうか。
空を仰ぐと満天の星が瞬いていた。
一際眩しく光る星。
好きな人を…示す星。
戦闘を繰り返した体はボロボロで、体力も殆ど残ってはいない。
死ぬ気で魔物を蹴散らし、外へ繋がる扉を開けた。
バタンッ…っ!
開かれた扉。
目に刺さる外の世界の光。
そして…絶望……
「…そうか…孤独の中の死…そういうことか……」
見渡せば360度青い海が広がる。
ここは陸から遥か離れた孤島…。
船がなければ…出られない。
「…だから自害したのか…」
カランと剣が手から滑り落ちた。
彼等から漂った臭いはホーリィボトル。
この魔物の巣窟で片道だけ襲われなかったのはそのためだった。
彼等と剣を交えた時にかけられた液体はダークボトル。
あれをかけられた時は魔物に殺させるつもりだと思っていた。
いや、それも目的だったのだろう。
たとえ魔物から逃れて命からがら建物から脱出出来たとしても、
そこに待つ現実に絶望が大きくなる。
彼等はここから出るつもりが始めからなかった。
港で契約した船も片道だったのだろう。
ユーリに無茶をするなと言っといて…またユーリに叱られてしまうな…。
膝を付いたらガシャッと鎧の音がした。
「…伝えたかったことが…沢山あるんだけどなぁ…」
ユーリは他人のために自己犠牲を厭わない人だからいつも心配なんだ。
あの時だって怪我も治さずにフラフラしてるし…
あと甘味だってそろそろ気にしないと、
いつまでもあの体型が維持出来ると思うなと言ってやりたいし…
エステリーゼ様への口の聞き方もどうにかした方がいいと思うし
あ、でも料理おいしかったよ、とか
何だかんだ言って皆に好かれてて羨ましいとか、
男の自分から見てもやっぱりカッコイイとか………
いや、そんなことじゃなくて…
………
「…ずっと…好きだったよ…」
呟いた言葉は空と海に溶けて誰にも届くことはなかった。
「………」
この期に及んで浮かんでくるのは君への未練ばかりだ。
でも多くは望まない。
ただ、ひとつ…
このままここで死ぬようなことになるなら…
どうか彼が、僕のことを忘れますように…。
「…っつ…っ」
気が付くと冷たい床の温度を頬に感じた。
爽やかに吹く風が髪を撫でる。
ゆっくり体を動かす。
腕と腹部に激痛を感じる。
折れた骨が内臓にささる。
フレンはそれでもゆっくり体を起こす。
足にも痛みを感じた。
右足の骨折も確実だった。
体は濡れていて気持ち悪い。
剣を構えて、目の前の騎士に切り掛かった。
一人の騎士が受け止める。
剣を受け止めるので精一杯なのか敵は薙ぎ払うこともしない。
様子を見ていたがもう一人の騎士が動くのを横目に捉えて反射的に剣を薙ぎ払った。
ガシャンと瓶の割れる音がする。
投げかけられた中身の液体は体を伝っていく。
「…っ」
剣を構え直して一人、そしてもう一人と斬り付ける。
抵抗も少なく斬られる騎士にフレンは眉を寄せた。
「…っふ…っ」
力の差は歴然だった。
切り付けられた騎士は膝を付く。
だがその顔から窺えるのは不敵な笑み。
諦めたというよりは目的は果たしたという顔だった。
「…あの人がしたことは間違っていた。目を覚ましてください…」
「…俺達は…それでもあの人と生きて行くと誓っていた…っ」
「間違いだとか関係ない…っ彼が創る世界を生きたいと…そう考えた、お前は同志だったはずだっ!」
最後の力でフレンを睨みつける。
「我々は裏切ったお前のことを許さない…孤独の中で死ぬがいい…っ!」
二人が剣を構える。
「…っよせっ!!」
「覚えておけ!我々は貴様を怨んで逝くということを…!!」
-----っ。
肉を貫く鈍い音が響く。
フレンの制止も及ばず二人の騎士は自害した。
「…っ」
動かなくなった騎士を少しの間見詰める。
彼等は、アレクセイが遺した自分への最後の思い。
少しだけ、あの人の優しさを思い出して心にちくりと痛みが走る。
ゆっくり立ち上がる。
目は反らさない。
これが自分に課せられた責任。
フレンは剣を握り締める。
ここから出なくてはいけない。
大人しく死んでやることは出来ない。
ここは魔物の巣窟。
戦闘は必至だ。
だがこの辺りの敵なら一人でもなんとか…
滅多にない一人での戦闘。
「孤独の中で死ぬがいい」
…その言葉はそういう意味だったのだろうか…
そんなことを考えていたからその巨大な気配に気付くのが少し遅れた。
強い魔物は気配を悟られずに近付くことも容易にしてくるものだ。
反応が鈍った体で咄嗟に頭を守ったが右側に強い衝撃を受けた。
メキメキと骨が音を立てる。
ギガントモンスターだ。
逃げ道はない。
ここには自分以外誰もいない。
やるしか、ない!
フレンは剣を構える。
襲い掛かる巨大な敵に単身攻め込んだ。
潮風が気持ちいい。
もっとも、それを気持ち良く感じてる余裕なんてないけれど。
騎士二人が船長と何やら話している。
話が纏まったのか船長と騎士は軽く握手を交わしていた。
「お待たせいたしました、ここからは船で進みます」
「…わかった。」
フレンは頷いた。
船、か。
さて、どこに連れて行かれるのか…
船に乗ってしばらく行く。
その航路は知っているものだった。
騎士団の調査や親友を捜索するのに何度も往復した道だ。
なるほど、とフレンは思う。
「着きましたよ」
何食わぬ顔で騎士が言う。
フレンは大人しく降りる。
ザウデ不落宮…。
やっぱりここか、とフレンは冷静に受け入れた。
「…ソディアはどこに…?」
「一番奥に行きましょう、怪我をして動けないでいるので…」
歩きながら話す。
「君達は怪我をしていないんだね」
「えぇ、我々はヘリオードに助けを求めにきた騎士の言葉を伝えているだけですから…」
二人の騎士はフレンの前と後ろを歩く。
答えたのは前の騎士だが振り返ることはなかった。
そのまま無言で歩く。
微かに風に乗って彼らから何か妙な臭いがすることに気がつく。
この臭いには覚えがある。
やがて最奥へ辿り着いた。
辺りをぐるりと一通り見渡す。
「…誰も居ないようだが…?」
「…おかしいですね…」
二人の騎士は顔色一つ変えずに言った。
「…ソディアはどこだ?」
「…くっ」
部下の名前を出すと騎士は堪えられなかったという風に笑みを零した。
確信した。ソディアはここにはいない。
「…そうか。君達が彼女に手を加えていないか心配だったんだ」
「ハッ、我々が?そんなことするわけないでしょう」
大袈裟なジェスチャーで笑う。
「我々の標的はあくまであなた。
あの忠実な副官ならあなたの身に何かあっただけで壊れそうですし…」
ゆっくり2人の騎士は剣を抜いた。
「………」
漸く本性を出してきた騎士二人にフレンはゆっくり口を開く。
「アレクセイ親衛隊…だね」
「…始めから気付いていたんでしょう?」
「素晴らしいですね、
我々は閣下の命で一度だけ任務を共にした時に顔をあわせただけだというのに
顔を覚えていましたか。」
「しかしやはり優しいというのは玉に瑕ですね、
部下の身を案じるばかりにのこのここんなところまで付いてきてしまう。」
「……」
フレンが静かに剣に手をかける。
騎士二人は不敵に笑った。
