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10


「……ユーリ…」
「ん?」
「…眠い…」
「だ~め。もう一回」
「………」
フレンはもう重い瞼も頭も上げる体力なさ気にこくこくと舟をこぎつつある。
「…お前さぁ、俺のこと好きならなんで女と付き合えなんて言ってたワケ?」
告白を聞いてて疑問に思って当然のことを聞いた。
「…ユーリに好きな人が出来たら…諦めるしかないでしょ…?」
重い頭を上げられないままフレンは話す。
「…言う前にフッてもらえたら…親友ではいられるから…」
「…だから誰かと付き合ってほしかったのか?
 俺はお前にそれ言われる度にフラれてる気がしてたのに…」
目の前で俯く頭を優しく撫でた。
「……ユーリぃ…」
「ん?」
「…好きだよ、…大好き…。ユーリが一番好き…」
「…っフレン…っ!」
「だからもう寝かせて…」
こてりとユーリに体を預けて目を閉じる。
「…って何でいらない言葉付け足すんだよっ!最後のさえなけりゃ…っておいフレンっ」
「…うぅ~…もうしつこいユーリ…」
「しつこいってなんだよ!?」
フレンはゆっくり体をユーリから離して重い瞼を持ち上げる。
「もう何度も言ってるんだからいいでしょ?で、返事はくれないの?」
「は?返事なんてオッケーにきまってんだろ、
 俺さっきからずっとお前のこと好きだって言ってたつもりだけど?」
あっさりと言った。
フレンはむぅ、と眉を寄せて頬を膨らませる。
「なにそれ、軽すぎ。やり直し!」
「はぁ?」
「人には散々言い方注文しといて自分のその軽さはなに?僕だって妥協しないよ…!」
「だから好きだってばっガキん時からずーっと!」
「明日には忘れてる」
「忘れねぇってば!愛してます!」
「投げやり…」
「愛してるっお前だけだ!」
「………ほんとに?」
「あぁ!」
「うん、僕も愛してるよ、ユーリ」
にっこり笑って微笑んだ。
昔見たあの笑顔。
思わずかぁっと熱くなったユーリにフレンがまたこてりと体を預けた。
「ユーリ…もっと言って…」
甘えるその声にユーリは体を抱きしめながら耳元に囁いて応える。
「…愛してるよ…フレン…」
フレンは幸せそうな笑顔で夢の世界へ旅だった。


「フ~レ~ン~、なぁ顔上げて?」
「~~~っ無理…っ恥ずかしい…っ」
翌日起きてみれば昨晩の異常さが冷静な頭ではそれはキツイものがあった。
お互い好きだ愛してると何時間も言い合って見詰め合ったあの甘い時間。
素面の頭にはダメージが大き過ぎた。
「フレン、俺ちゃんと覚えてるぞ、お前が言ったこと、一言も忘れてねぇ」
昨日ユーリにもたれかかったまま寝てしまったフレンは
ユーリの腹辺りに顔を埋めて抱き着くような格好で目が覚めて動けなくなった。
恥ずかしさから腰に回した腕に力が入る。
「かわいいかわいい」と頭を撫でられ羞恥と嬉しさが混ざり合う。
なのに体を離すという考えは思い浮かばないから困ったものだ。
「ユーリ…」
「ん?」
「…もう女の人とお酒飲みに行かないでね…」
「あぁ」
フレンは漸くユーリから体を離して、笑顔を向けた。



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次回はシリアスです。多分。
PR
9


「…告白しろってこと?」
「今なら断らねぇらしいぞ」
「で、明日には忘れてる君に「昨日告白してオッケーもらったよ」って自分で報告するの?」
「忘れねぇから安心しろ」
「言ってることが支離滅裂なんですけど…」
酔っ払ってると言ったり忘れると言ったり忘れないと言ったり…
もしかして相当お酒が回っているんだろうか。
それともやっぱりまともなんだろうか。
フレンはよくわからなくなってきた。
ただわかっていることはもう言ってしまったわけだし今更だということ。
明日忘れているにしろ、今フラれるにしろ対して変わらないか、
とだんだんめんどくさくなってきたフレンは半ば投げやりに言った。
「ん~、じゃあ付き合ってください」
「…いやだ」
「………」
フレンは本気で一発殴りたくなった。
言えって言ったくせに言うとフるってどういうことだ。
からかわれているんだろうか。
しかしユーリの口からは予想とは違う言葉が出てきた。
「もっとこう…ねぇのか?」
「何が?」
「顔を赤らめたり恥じらったりっていうの」
「…どうせ明日には忘れてるんでしょ」
「忘れてたら思いっきり殴っていいから、もう一回やり直し」
「……」
一体何の権限があってこんなことさせられてるんだろうか…
ユーリの真剣な顔にフレンははぁ、と一つ溜め息を吐いた。
「……ユーリ」
「ん!」
フレンがユーリの方を向いて座り直すとユーリも体をこちらに向けて姿勢を正した。
「……好きです。付き合ってください」
「…う~~ん…」
ユーリは腕を組んで考えている。
女の告白なら二つ返事で即オッケーするくせに何が気にいらないんだ。
フレンはユーリの言葉を待った。
「もうちょっと…気持ち込めらんねぇ?」
「…今更無理だよ。なんかこの告白おかしいもん」
酒の席で白状させられて、告白しろと言われて、挙げ句やり直しさせられている。
確かにユーリのことはずっとずっと、小さい頃から好きだったから
気持ちが全くこもっていないわけではないけれど。
「フレン、俺お前が女と付き合えっていうからとりあえず色んな女と付き合ってきた。」
「うん…?」
「今までは本命じゃないし適当にオッケーしてたけど今回のは妥協するわけにはいかないんだ。」
「…どういう意味?」
「意味は自分で考えろ。さ、もう一回!」


結局フレンはこのあと延々告白させられ続けた。
8

学校も終わって、ついに友人たちの泣き落としにも怯まなかったユーリとフレンは
帰りにスーパーに立ち寄っていた。
今日は何が食べたい?と聞いてみてもユーリはどこか上の空だった。
しょうがないので適当に特売の物をカゴに入れて後で組み合わせて考えようなんて思っていたが
酒コーナーのところでフレンはゆっくり立ち止まった。
「ね、ユーリ」
「んぁ?」
「たまには家で飲む?」
ユーリは酒をちらりと見て、「あぁ」と小さく頷いた。




缶チューハイを何個か並べて晩酌が始まった。
家でなら気兼ねなく飲めるとユーリも遠慮なく開ける。
そこそこいい感じになってきたところでフレンが聞きたかったことを尋ねた。
「ねぇ、気になることってなに?」
「ん?なに?」
「気になることがあるって言ってたろ?」
「…あぁ…」
ユーリは理解して顔を逸らして間延びした返事をした。
「…言いたくないならいいけど…」
「……言いたくないわけじゃねぇけど…」
「けど?」
フレンが続きを促すとユーリはゆっくり向き直って口を開いた。
「……好きな奴って誰…?」
「………またその話?」
お酒を口に入れようとしていたその手を止めて呆れたようにユーリを見た。
「またってなんだ。俺はお前が思うよりお前のこと考えてんぞ」
「………それこそ言いたくないわけじゃないけどって感じだよ…」
今度はフレンが顔を逸らした。
「じゃあ教えて、誰?」
「…聞いてもユーリ困るだけだと思うけど…」
「なんで困るんだよ?」
「…ユーリ今酔っ払ってる?」
「さぁ?ってか誰なんだよ」
「君が酔っ払ったら言う。」
「なんで、酔っ払ったら俺記憶……」
言ってから気付く。
なくして欲しいのか、記憶を。
「フレン、俺もう酔っ払ってるから。明日にはきっと何も覚えてない」
「なにそれ、信じられるわけないでしょ…」
「フレン」
「………」
それでも食い下がるユーリに
フレンはついに諦めた様にぐいっと缶に残っていた少しのお酒を飲み干した。
「…ユーリ…。」
「ん?」
「僕が好きなのはユーリ。」
「………」
「どう、後悔したでしょ?約束だよ、明日には綺麗さっぱり忘れてね」
フレンはまた次のお酒に手をかけた。
「…フレン」
「なに?」
「…俺今酒入ってる。酔っ払ってる。」
「…うん…?」
「なんか言うことねぇ?」
「………」
ユーリが促すことがわかってフレンは口の中の酒をごくりと喉に通した。
7


フレンのあの言葉を聞いて声が出なくなった。
自分が一番よく知る人物…
言われた時に数人の友人の顔が思い浮かんだがどれもしっくりこなかった。
それにやはり自分が一番よく知る人物とはフレンのことで、今やそれすら怪しい。

フレンに昔から好きな人がいる…
それを聞いてから今まで抑え込んでいた気持ちが溢れそうになる。
嫉妬という形で…。


「朝メール来てた」
「ふ~ん、誰から?」
ユーリの主語のない言葉にフレンは素直に質問を返した。
「カノジョから」
「…そう…」
「『お別れしましょう』って」
「………。絶対昨日のせいだよね…」
「あの程度でなぁ…努力するまでもなかったな」
「…君ねぇ…」
呆れたように言うのをユーリは言葉で遮った。
「お前だって付き合ってる奴いねぇじゃん、俺のことより自分のこと気にしろよ」
「だから僕には……っ、僕のことはいいよ、ユーリみたいにいい加減に人と付き合ったりしないから…」
「俺だって別にいい加減に付き合ってるわけじゃねぇよ」
「いい加減だよっ僕のことなんか放っとけばいいだろ!?」
「放っとけねぇから構ってるんだろ」
「…っ、……どうして…構わないことなんて簡単じゃないか…」
「知らねぇよ、放っとけねぇもんは放っとけねぇんだよ」
「………あまり優しくしないでくれ…」
「フレン?」
俯いて呟いた言葉はユーリには届かなかった。
「…ごめん、何でもない。それより早く食べて、もう出ないと遅刻するよ」
「ん、あ、あぁ」
先に立ち上がって食器を片付けるフレンを見てユーリも最後の食パンを口に含んだ。


「なぁユーリ、今日空いてるか?」
学校で顔を合わせるなり友人がユーリを誘った。
「…空いてるけど何?」
「合コンだよ、ご・う・こ・ん!」
「…お前ら俺が告られた時一緒に居たよな…?彼女いると思わねぇのか?」
「んなもんどうせもう終わってんだろ?」
「…………。」
図星なだけに返す言葉もない。
「な、フレンも。」
「え、あぁ…ユーリが行くなら…」
酔っ払いの介抱に…という言葉は濁した。
「よっしゃ決定だな!お前らが来ると女子のレベルも上がるんだよなぁ~」
楽しそうに期待を膨らませる友人だったがユーリは結構真剣な顔で言った。
「いや、いい。俺パス。」
「は!?いや、パスってなんで!?」
いつも嫌々ながらも二つ返事でオッケーしていたユーリが断って来て
友人は当てが外れたと目を丸くする。
「また知らねぇ女子と付き合うことになったら嫌だもんな。
 ちょっと今気になることがあってそれどころじゃねぇ。」
きっぱり断ったユーリに続き、友人は涙目でフレンを見た。
「あ…ユーリが行かないんだったら僕も…」
「があぁぁぁんっ何なんだよお前らーっもう合コンあっても誘ってやらねぇぞー!?」
友人は必死に気持ちを向けさせようとするがフレンもまた、
ユーリの考えていることがわからず首を傾げるしかなかった。
6


結局デートらしい会話もあまり行われないまま初デートは終了した。
別れ際の彼女のあの不満そうな顔はユーリにはきっと届いていない。

タイムセールをするスーパーに向かう二人。
フレンは溜め息をつきながら言う。
「…ユーリ…君はあんなデートでいいと思っているのか?」
「あ?」
フレンの言葉に怠そうに聞き返した。
「だから、あれじゃデートって呼べないだろ?」
「…今日のはデートじゃないだろ、俺とお前がパフェ食いに行くのにあっちが勝手に付いてきただけだ」
「でも僕が居なかったらデートって呼べたよ。
 彼女ずっと僕のこと邪魔そうに見てた、居心地すごい悪かったんだから…」
「…どっちかってーとあっちのが邪魔だろ…」
「え?何だって?」
「別に何も。とにかく終わったことはもうしょうがねぇ。」
「…今度こういうことがあったら彼女を優先してくれ。僕のこと気遣ってくれるのは嬉しいけど…」
「別に気遣ってねぇよ、俺のしたいようにしてるだけだ」
「なら今度からは僕の気持ちも考慮してくれ。」
「…へいへい」
ちゃんと僕が言ってることがわかっているんだろうか。
自分との約束を守ろうとしてくれるのは嬉しいけどあの場には居たくない。
彼女の為じゃない。
本当は自分の為に立ち去りたかった。


晩御飯も美味しくいただいてお風呂も入って漸く寝る時間がやってきた。
何だか気疲れしてやけに眠い。
先に布団に寝転がってふぅ、と息を吐いた。
ちょっとうとうとしてきたと思ったら上からずんっと重い衝撃を感じた。
「う゛っ」
「何だよもう寝んのか?」
重みの正体はユーリだった。
「………そうだよ、もう寝たいからどいてくれないか…重くて眠れない」
「………なんか最近お前ちょっと冷たくねぇか?」
「そんなことないよ、いつもと一緒だろ?」
「いや、絶対冷たい。」
「……じゃあどういう反応がお望みなんだい?」
言い切るユーリに溜め息を吐いて聞いてみた。
おちゃらけた答えしか返ってこないと思っていたから、ユーリが真剣な目をしていて息を呑んだ。
「…なぁ、好きな奴ってだれ?」
「………なに」
「好きな奴、いるんだろ?昔から好きだって奴が」
「………」
「昔からってことは俺も知ってる奴か?」
「………」
「……フレン?」
「………」
聞き出そうとする度フレンは辛そうに表情を歪めた。
「…そうだね…君が一番よく知る人かもね…」





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あれから一週間です。
今までなんと書いていいものかわからずコメントを自粛してきました。
私が住んでいるところでも揺れを感じまして家に帰ってテレビを見るまでは
まさかこんなことになっているとは思いもしませんでした。
募金や物資、他国からの活動、思いやりは力だと感じます。
まだまだこれからだと思います。
希望を失わず頑張っていって欲しいです。
早く傷が癒えることをお祈りしております。
5


これは…明らかにおかしいだろ…

最近出来た喫茶店。
付き合う男女が向かい合って座るのに、男の数が一人多い。
ユーリの隣に座るフレンは壁側に座らされてユーリに断らなければ歩き回ることも不可能だ。
つまりは逃げられない。

あれから説得を頑張ったフレンだが努力は実らず
結局この意味のわからない構図が出来上がっている。
明らかに自分は邪魔だ。
フレンはここから立ち去ろうと目論む。
だって彼女の目がそう訴えてきている。
「えーと…ユーリ、僕ちょっとトイレに…行きたいんだけど…」
「ダメだ」
「ダメって何!?」
「お前帰るつもりだろ、嘘下手だなぁ相変わらず…」
「………」
頬杖をつきながら言うユーリにむぅっとフレンは眉に皺を寄せた。
「じゃあはっきり言うけど帰りたい。僕居なくてもいいでしょ別に…」
「いやいる。このあと一緒に買い物すんだろ」
今日は行きつけのスーパーが18時からタイムセールをする日だ。
それはいつも「お一人様一つ限り」で二人で行くと得である。
「じゃあその時に待ち合わせよう」
「んなめんどいことしなくても一緒に行きゃいいだろ」
「だから今はデート中だろって言ってるんだ!」
「……パフェ食いに来ただけだろ?」
「………」
彼女はじとりと睨む。
何故かユーリではなくフレンを。
そう、自分の存在のせいでこれはデートではなくただパフェを食べに来ているという行為になっている。
自分さえいなければデートと呼べるのに。
「わかった、じゃあ席を離そう。僕カウンターに行くから」
「お待たせしました~」
提案の途中でタイミング悪くパフェを持った店員が来てしまった。
「あ、すみません、一人向こうの席に移動したいんですが…」
「え?あ、別に構いませんが…」
「よかった!じゃあユーむぐっ」
席を立つためユーリに一度立ってもらおうとお願いしようとした時、
勢いよく口を手の平で押さえられた。
誰の手って勿論ユーリの。
「ごめんお姉さん、席移動ないから全部ここに置いてって」
にっこり微笑む笑顔はよそ行きの嘘くさい笑顔。
「あ、はい…」
店員のお姉さんは頬を赤らめて可哀相にその笑顔に騙されてしまった。
テーブルの上に並ぶパフェとコーヒー。
ユーリのものだけ名物ジャンボパフェだ。
彼女の前には普通のパフェ、フレンの前にはミニパフェだ。
フレンはそれを美味しそうに食べはじめるユーリの横で仕方なくアイスを一口含んだ。
4


二人揃って登校する。
相変わらず仲いいな、なんて道行く顔見知りに冷やかされながら。
校門まで来たところでフレンがそこで待つ女性に気が付いた。
「あ…」
「ん?」
ユーリはフレンの顔を見て、それから目線を辿った。
「…なんだ?好みか?」
「違うよ」
女性が気付いてこちらに駆け寄ってきた。
「おはよう、ユーリ、フレン」
「おはよう」
「…誰?」
ユーリだけが首を傾げた。
「君の彼女」
フレンの簡潔な言葉にユーリはもう一度女性を見た。
にこりと女性は微笑んだ。
「よろしく」
「…あぁ~…見覚えあるような…ないような…」
「私あなたの斜め向かいに座ってたのよ?結構目合ってたと思うけど…」
女性は自分がユーリが酔う前に少しでも意識されていると自信があったのか、
そんなことを言ったがユーリは首を傾げるだけだった。
「…居たっけ?」
「酷~い!もう今日帰りにパフェでも奢って貰わないと気が済まないわ!
 ね、今日一緒に帰れるでしょ?」
怒ったふりして帰る約束をするなんてなかなか高度な業だ、とフレンは感心する。
「いや、悪いけど今日こいつと寄るトコある」
「こいつ」と指を差されたフレンはぽかんと口を開けた。
「え…」
「えってなんだよ?まさか忘れてんじゃねぇだろな!?
 今日は駅前に出来た新しい喫茶店に行く日だろっ」
正確にはその喫茶店の名物らしいジャンボパフェを食べるユーリの付き添いだ。
「忘れてはないけどこっち優先させなくても…」
「お前の方が先に約束してた」
「あ、あの喫茶店か~私も行きたいと思ってたんだ~」
彼女が主張した。
「ふ~ん、じゃあ行けばいいんじゃねぇか?」
「……」
冷たく返したユーリにフレンが溜め息をついた。
「えっと…じゃあ二人で行って来たら?僕別にパフェ食べる予定ないし」
仕方ないのでフレンが自ら引くことにした。
「なんでだよ今日付き合ってくれるって言ってたろ」
「だから彼女も行きたいって言ってるんだから丁度いいじゃないか」
「…お前は来ねぇのか?」
「何でそこに僕が付いて行くんだよ…明らかに邪魔じゃないか」
「………」
隠すことなく不機嫌な空気を漂わせたユーリ。
「僕はいつでも付き合うから。ね?」
何で自分がこんな宥めるようなことしなきゃいけないんだ…
フレンは少し胸が痛んだ。
「で、どうすんの?俺との約束なかったことにして誰かと会うのか?」
ムスッと拗ねたような口調と表情。
何を怒っているんだ一体。
フレンは内心首を傾げる。
「別にそんな予定ないよ。ラピード連れて散歩とかするよ」
ユーリは暫く様子を伺うようにフレンをじっと見た。
「…とにかく!俺はお前が行かないなら行かない。」
ユーリはそう吐き捨ててずんずんと校舎へ歩いて行ってしまった。
「は!?何言ってるのユーリ」
フレンは腕を伸ばすがユーリは立ち止まらず
その場に彼女と二人だけ取り残されて何とも気まずい空気が流れた。
「…えっと…」
「………」
彼女が無言で睨む。
「…あの…説得してみます…」
何故か敬語でフレンはその視線に答えた。
3


『ユーリ、ユーリ』
『ん、どうした?フレン』
『あのね、僕ユーリが一番好きだよ』
『一番?』
『うん!ユーリは誰が一番好き?』
『俺もフレンが一番だな』
『わぁっほんとに?ありがとう、うれしいな』
そういって笑ったフレンは今まで見てきたどんなものより愛しいと思った。


見上げていたのは薄暗い部屋の天井だった。
今でも時々夢に見る、幼い二人のそんな会話。
多分、自分の中で一番嬉しかった瞬間なんだ。
それを頭が覚えていて夢で何度も再生してくれる。
時計を見ると朝4時。
隣を見ると背中をこっちに向けて眠る幼なじみ。
あの夢を見た後は心が暖かい気持ちになるのに今日は違う。
自分が一番だと言った幼なじみの一番は、今はもう自分ではない。
「…フラれたって…いつの間に告白したんだよ…」
フレンのことなら何でも知っていると思っていた。
「…何で俺こんなにダメージ受けてんだっての…」
フレンに触れようと伸ばした手は浮かんだ苦笑と共にポスリと布団の上に落ちた。



「おはようユーリ。今日は早いね」
眠れなくてソファーに座り込んでいたら
フレンが普段通りの時間に起きてきていつもと違う行動をとっていたユーリに首を傾げた。
「…ちょっと…早く目が覚めちまった」
「へぇ、何か予定があるわけじゃないの?」
「何もねぇ」
「そっか。デートでもするのかと思った」
言いながら顔を洗いに行ってしまった。
…何故かムカついた。

朝食をとりながら先程のことをまだ引きずるユーリは食パンをかじりながらフレンを睨んだ。
「…デートって…まだ会ったこともねぇっつの…」
「会ったことはあるでしょ、ユーリが忘れてるだけ。」
「…大体よぉ…あんなべろべろに酔っ払ってる時の告白とかって有りか?」
「何だかんだ言って一度はデートするんじゃないか。
 こんなにモテるの今だけかもよ?早く本命決めちゃえばいいのに。」
「俺はいつまでもカッコイイままでいる自信があるぜ」
「はいはい。」
「…お前の反応は昔のが可愛かったな。俺のことカッコイイカッコイイって言ってくれてたのに。」
「いつの話してるのさ…」
コーヒーを啜りながら呆れたようにユーリを見る。
ユーリは真剣な顔でその目を見詰め返した。
「…な、昔俺のこと一番好きだって言ってたの…覚えてるか?」
「………」
フレンは目を見開いてほんのり頬を赤らめた。
「…良く覚えてるね、そんなこと…」
「記憶力いいだろ」
「……昔の話だよ。」
「…そ…だな…お前には…他に一番が居るもんな」
「………」
フレンは俯いただけで肯定も否定もしなかった。
それから無言のまま朝食はとり終えた。
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